複数園の幼稚園教諭による研究会を組織し,2013年度5回の研修を行った.ネットワーク型研修システムのリソースとしての指導案,ビデオクリップの有用性を明らかにするためである.研究会の組織は園長,教務主任,中堅教師,若手教師から構成した6名と大学教員である.研修システムは,指導案あるいはビデオクリップをデータベースから呼び出し,それを電子黒板機能を有するプロジェクターによる提示により,検討を行うというものである. その結果,保育実践にかかわる教師の実践知が指導案(日案)に基づきかなり表出され共有される可能性が明らかになった.さらに,指導案を週案とした場合,日案とは異なるカリキュラム構造の視点から教師の知識が表出されることが示された.また,ビデオクリップについては,10分程度の片づけ場面や集団遊び場面であっても,自らの保育経験や他の発言から,自らの保育技術から保育目標や保育観が表出され,それが検討された.したがって,複数園によるネットワーク型研修において日案および週案,他園での保育ビデオクリップが研修における教師の学習リソースとして有用であることが示された. 同時に,大学研究者による批判的な問いかけの重要性も明らかになった.研究会が複数園の幼稚園教諭から構成されるため,各教師の発言はどうしても自らの幼稚園における状況に依存しがちである.特に,公立幼稚園の場合,市が異なるだけで保育や研修のあり方に大きな違いがあり,それが教師の発言にも表れていた.したがって,大学研究者による問いかけが教師間の相互作用の質にかなり影響することが示された.ネットワーク型研修においては,教師間の相互作用をつなぐマネジメントができる教員が必要となることも示唆された. 今後は,各幼稚園の教師がもつ保育に関する問題の同定とそれに対応した研修リソースを選択するという段階を組み入れたシステムとすることが求められる.
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