研究概要 |
本研究の全体構想は,「貴重な技術史資料を実際に使用した利用者の経験をネットワークで集めることと,そこで得た集合知による新たな分類と連動したデジタル展示システムを構築すること」である.具体的には,京都大学総合博物館に624点ある旧制三高資料ならびに京都帝国大学時代の機械原理教育モデルをはじめとする貴重技術史資料を対象とする.平成23年度は、旧制三高以外に旧制四高や旧制一高、姫路高専などと連携し、いずれの旧制高校においても保存されている13点の科学実験教育機器を選定した。そして、これら13点を一括閲覧可能な非文献リポジトリホームページに掲載し、地図アプリなどと連携して国内での収蔵状況を俯瞰できる情報基盤を確立した。 本年度では、これら非文献リポジトリホームページの拡充のみならず、ホームページに対応する実際の機器の一部を京都大学総合博物館技術史コーナーに実際に展示した。そして同科学実験教育機器の写真やキャプションをタブレット機器にダウンロードし、展示場でのデジタル展示として、インタラクティブなキャプション情報の提供ツールを開発した。さらにタブレット機器には、タップのログなど来館者の使用ログを一か月保持できるようなロガー機能を備えており、将来的には来館者の資料閲覧手順などに対応した情報提示手法などとも連携する予定である。 ただし本研究課題は、都合により中断せざるを得ない。しかし本研究で作成したタブレット情報は、科学技術史等の関連研究者に広く公開し、同コンテンツや博物館における実展示との連携など容易な組み合わせにより各種拡張ができるように開発されている。旧制高校をはじめとする科学実験教育機器の調査などを実施する研究者集団などにご使用いただくことで、同系の技術史資料を保管する博物館や科学館はもとより、高校物理や工専など技術教育に関する様々な学校教育現場での利活用など幅広く展開することが期待される。
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