研究課題/領域番号 |
23650564
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
橋本 明 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (40208442)
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研究分担者 |
中村 治 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (10189029)
板原 和子 大阪体育大学, 健康福祉学部, 教授 (50390175)
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キーワード | 精神医療史 / 医学史 / 医学博物館 |
研究概要 |
2012年度には、西欧の精神医学博物館・資料館および関連施設の視察を重点的に行い、その歴史・展示・企画・運営の実際について情報収集を行った。訪れた施設は、ドイツのムゼーレ(ゲッピンゲン)、ヴュルテンベルク精神医学博物館(ツヴーファルテン)、イギリスのベッドラム博物館(ケント)、フロイト博物館(ロンドン)、スイスのチューリヒ大学医学史博物館、ベルン精神医学博物館、アールブリュット・コレクション(ローザンヌ)である。なお、2012年4月にベルギーのギスラン精神医学博物館(ゲント)で開催された、アウトサイダー・アートの国際シンポジウムに参加し、同時期にゲールで行われていたアウトサイダー・アートの企画展も見学した。これらの研究成果の概要は、2012年10月の日本精神医学史学会で「西欧における精神医学史博物館の社会的な役割について」という演題で発表した。 また、2013年1月にはこの研究の一環として第3回目の「近現代精神医療史ワークショップ」を名古屋で開催した。歴史研究者だけではなく、保健医療福祉分野などで活躍するさまざまな参加者が集まり、精神医療の歴史や資料に関する発表および討議を行った。演者および演題は、中村治(大阪府立大学)「地域精神医療に求められているもの―洛北岩倉の事例をもとに―」、當間正敏(日本聾史学会)「巣鴨病院における聾精神患者の記録」、水野葵(医療法人好生会 三方原病院)・小山友理子(医療法人好生会 はまかぜ)「病棟建替えを機に精神科病院の歴史を振り返る―精神保健福祉士の視点から―」、三浦藍(梅花女子大学)「岩龍寺ならびに香良脳病院における水治療の変遷」である。 以上の研究活動をとおして、近代精神医療史資料の保存と利用に関する国内外の状況が一層明らかになり、わが国の精神医療史研究の方向性をさぐる重要な足がかりとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近代精神医療史資料の保存と利用に関する基盤づくりのために、初年度(2011年度)は研究代表者が主催した第15回精神医学史学会(於:愛知県立大学)において、国外の研究者も招聘してシンポジウム「近代精神医療史資料の保存と利用」を企画した。また同学会開催に合わせて、精神医療史資料の一般展示を強く意識したパイロット・スタディとして、著名な精神医療史研究家である小林靖彦の「回顧展」を行った。次いで、昨年度(2012年度)は、国外の精神医学に関わる西欧の博物館・資料館を訪れ、精神医療史資料の保存と利用の先進事例を学ぶと同時に、当地のスタッフと交流・情報交換を行った。また、精神医療史に関わる研究者の研究発表と交流のために、両年度で3回の「近現代精神医療史ワークショップ」を行った。 これらの活動は研究の目的に添うものであり、研究の達成度を評価すればおおむね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、近代精神医療史資料の保存と利用に関する基盤づくりに必要な情報や資料の収集を行ってきた。今後も同作業を継続・発展させていく同時に、歴史を通じて精神医療への一般の関心を呼び覚ますための、より実践的な研究活動に踏み込みたい。 具体的には、1)研究代表者の所属大学などの協力を得ながら、資料の保存と展示に必要なスペースを整備する、2)国内外の機関や施設と提携して精神医療の歴史と現状に関わる展示を企画する、3)歴史を通じて精神医療への理解を深めてもらうため一般市民向けのセミナーや小・中・高校での出張展示・講義などを企画・実施する、4)精神医療の歴史に関心のある院生・学生に研修を行い3)の企画に関わってもらう、などが考えられる。 このように、研究者だけではなく、広く一般市民とのつながりを持ちながら、近代精神医療史資料の保存と利用に関するネットワーク活動を進めることが今後の研究の方向である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の主たる使途としては、2つの国際学会(2013年6月:イギリス・オックスフォード、同7月:オランダ・アムステルダム)への参加費用(旅費および滞在費)が挙げられる。これらの学会では、本研究に関わる精神医療史の演題を発表する予定である。また、第4回目となる「近現代精神医療史ワークショップ」を名古屋で開催し、さまざまな分野の研究者を集めて、研究発表および討議を行うための費用にも研究費を充てたい。
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