研究課題/領域番号 |
23650566
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
野間 晴雄 関西大学, 文学部, 教授 (00131607)
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研究分担者 |
北川 勝彦 関西大学, 経済学部, 教授 (50132329)
朝治 啓三 関西大学, 文学部, 教授 (70151024)
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キーワード | 比較文化史 / プラントハンター / イギリス / 植民地 / 園芸学 / 馴化 / 植物園 |
研究概要 |
北川は,南アフリカやニュージーランドから温帯の稀少植物のイギリスへの導入に関してプラントハンターの果たした役割について現地調査を行い,目下その資料を整理中である。 野間は,インド,中国での茶の栽培・移植に果たしたイギリスのプラントハンターの役割について調整を行い,R.フォーチュンのデータベースを作成予定である。 朝治は,18世紀イングランド庭園設計史の中におけるロバート・アダムの意義について考察した。アダムは本来、貴族の邸宅の設計や家具のデザインなどで知られるが、それ以外にも自らが設計した邸宅にふさわしい庭園のデザインにも自己の主張を反映させた。彼の生い立ちや教育について調べ、特にグランドツアーでイタリアに赴きそこで得た情報やインスピレーションを、帰国後の活動に反映させた結果、新古典主義と呼ばれる設計理念を打ち立てた。同時期に活躍していたランスロット・ブラウンという庭園設計士は大陸で流行していた古典主義的整形庭園を排して、風景式庭園をイングランド貴族の庭園設計に持ち込んでいた。従来の研究では、様式の変化におけるブラウンの意義のみが評価されていたが、実際に調べてみると、アダムが先に設計したものを、後からブラウンが手を加えた庭園が、あたかもブラウン独自の設計とみなされている例も見つかった。アダムは、イングランド庭園設計史の中では、整形式庭園から風景式庭園への移行期に、新古典主義を打ち立てたことで、19世紀以降の風景式庭園の流行への中間段階を担った人物と評価できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この2年間でイギリス・オランダでのプラントハンターの調査(野間),南アフリカ公文書館等でのイギリス人プラントハンターの事跡調査(北川),ニュージーランドでの植生・馴化調査(小椋)などがすでに完了しており,その取りまとめが進行しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者 野間晴雄(関西大学),分担者 北川勝彦(関西大学),朝治啓三(関西大学),連携研究者 川島昭夫(京都大学),小椋純一(京都精華大学)の研究組織を維持し,各人の分担フィールドでの史料,資料の収集・分析をすすめるとともに,成果を国際学会,国内学会等で公表する。2014年度末の最終成果の著書刊行に向けて各人の執筆タイトルを決定する。 野間はプラントハンターの経歴系譜調査,温帯熱帯地域の植物園におけるデータベースを依頼中であり,今年度後半の在外研究時にもヨーロッパ各地で資料を収集する。 最終報告は2014年度末を目途にゲストスピーカーの論考も加え各分担者,研究協力者1本の論考と総説を集めて,出版社よりの単行本を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
朝治啓三:ロンドン・日本での史料調査,とくにイギリス園芸協会での史料調査(イギリス海外出張の予定)。 川島昭夫:イギリスでの植物園・ガーデニングの歴史とサロンについての史料調査(イギリス海外出張の予定)。 野間晴雄:バングラデシュにおけるキニーネと茶の導入とプラントハンターの役割(バングラデシュ)6月に出張予定である。 このほか各人の関係学会,研究会での研究発表を行うとともに,内外の研究者と交流する。(社会経済史学会,西洋史学会,関西大学東西学術研究所,IGU京都会議) 前年度の繰り越し金は,連携研究者 小椋純一(京都精華大学)のニュージーランドへの出張を3月に実施したため,精算時期により次年度の精算となったために生じたもので,計画通り使用される。
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