研究課題/領域番号 |
23650567
|
研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
桐野 文良 東京芸術大学, 美術研究科, 教授 (10334484)
|
研究分担者 |
横山 和司 神戸大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (10523053)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 陶磁器 / 釉薬 / XAFS / XAENS / ESR(FMR) / 融剤 / 価数 / 鉄 |
研究概要 |
本研究では、陶磁器の釉薬の発色機構を基礎物性測定と原子レベルの構造評価により解明する手法を確立し、実際の文化財試料の分析へ適用することが目的である。研究代表者:電子状態の評価として、磁化状態の測定を行った。用いる試料はFe系の釉薬を用いた唐津焼である。Fe系材料は磁性体として知られており、磁性はFeの電子状態、特に電子スピンに起因する。この状態をはかるのが電子スピン共鳴吸収(ESR)である。ESRより高い周波数帯を用いる強磁性共鳴(FMR)を測定するのも有効である。これは、磁化状態の違いが配位子の種類や配位数、Feの価数などの差に対応している。これらの結果を用いて、磁化状態から配位構造を解析ことが可能である。手法の確立にあたり、構造や価数が既知な標準となる試料を用いた。これと合わせて、融剤組成を変えた試料を作製し、分光や色差などの測定を行った。研究分担者:高輝度放射光を用いたEXAFSやXAENS測定に先立ち、装置の製作および調整等の準備を行った。これは文化財試料を非破壊で扱い、測定を行うためである。放射光実験施設(ビームライン)は既存のものを用いるが、文化財を対象とする測定系は新たに製作、調整が必要である。また、釉薬中のFe系材料は新規な材料系であるので、測定にあたっては既知の試料を用いて予備測定を行った。また、代表者が作製した試料のEXAFSやXAENS測定を行いFeの状態を示唆する結果を得た。現在、解析を行うとともに第一原理計算の適用の可能性について検討を始めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試料の測定に先立ち、高輝度放射光施設の測定系の準備を行った。 文化財試料の色差や分光、ESR(FMR)測定ならびにXAFS測定やXANES測定を行った。これと併せて解析に必要な基本的な釉薬を作製し、文化財試料と比較の準備を行った。この内容は年度計画に沿うものであり、順調に研究が推移していることに相当する。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では釉薬の発する色彩の発色機構を磁化状態の観測と構造的観測の両面から遷移金属イオンの周囲の構造を解析する。電子構造は電子の有するスピンの状態に依存するので磁化状態の測定は有効である。このよう視点からの測定は行われていないので測定の立ち上げから行う。また、構造的側面からの観測は高輝度放射光を利用する。これは、イオン種に依存するのでFeに関する測定手法の確立から始める。特に、文化財試料を扱うので測定冶具からの開発が必要となる。また、測定結果の解析手法も確立する必要がある。電子構造は遷移金属イオンの周囲への原子あるいはイオンの配位に依存して変化する。この点を第一原理計算や構造解析手法を駆使して解明していく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
24年度は23年度の結果を詳細に解析するために生成条件(温度や雰囲気)が既知の釉薬試料を合成する。電子構造に関する基本物性を測定した後、23年度に確立した磁化状態の測定手法を駆使し、Feの周囲の電子状態の解析を進める。研究分担者:24年度は23年度に確立した高輝度放射光を用いたEXAFSやXAENS測定手法を用いて文化財試料の測定をはじめに行う。測定結果を用いて第一原理バンド計算により配位結合の状態を解析する。24年度の後半から25年度にかけて生成条件(温度や雰囲気)が既知の合成した釉薬試料のEXAFSやXAENS測定をおこない、配位構造を求める。
|