本年度は、前年度から継続してきた空撮システムの設計、プロジェクタを用いた表面形状の獲得のための光学系の設計を行った。空撮システムの設計に関しては、マルチコプターの操作性の難しさを改善し、誰でも簡易に操作できるように改善を進め、具体的には、マルチコプターとヘリウムガスを使ったバルーンを組み合わせ、ハイビジョン対応で手ぶれ補正が可能な無線カメラを搭載し、地上からタブレット端末を用いて無線カメラの映像を確認・撮影できるシステムを考案した。安定性、軽量化、操作性、画質のいずれも向上させることに成功した。懸案であった撮影時の風の影響も、マルチコプター単体で行うより小さく抑えられ、野外調査での実用性も高い。また、プロジェクタを用いた表面形状の獲得に関しては、単焦点の小型プロジェクタ、単焦点レンズのカメラを装着し、投影するライン光の波長を変化させて投影できるように光学系の設計を行った。物体の構造を獲得するためには、安定したライン光の抽出が不可欠である。このため、パターン光の波長は、プロジェクタの投影色を変化させながら、カメラで撮影し、パターン光が投影された画像からエッジ検出を行い、最も抽出率の高い波長を採用することで、対象物体の材質や環境光の影響を軽減することが可能となり、安定したライン光の境界面を抽出することができ、計測精度も向上した。機材も軽量で電源の確保もノートPCから可能なため、岩壁画や碑文のデータ化に有効性が高いと考えられる。さらに、低高度(5~10m)からの撮影によるデジタルアーカイブ作成法として、1脚を用いた地上撮影法を改良し、無線カメラとタブレットを用いた方式に改善し、操作性と軽量化を図った。
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