本研究は、科学博物館が立地しない地域においても児童・生徒らが科学・技術に関する体験活動を日常的に行えるようにするため、「地域の教育力」を全面に活用した極小規模博物館(類似施設)群と、学校教育、社会教育、家庭を含む科学教育ネットワークとを構築し、それらを用いた教育プログラムの開発・検証と、円滑な運営方法の確立を目的として行った。 対象地域に「μ科博」を設置し、科学教育ボランティア団体が運営・指導した。主な対象者は当該地区の児童・生徒や保護者、地域住民とした。本研究者が製作した教材を各「μ科博」にハンズ・オン展示した。各「μ科博」の情報の共有や動画による通信を行うため、ネットワークの設備を行った。展示された教材は、3カ月程度を周期として各「μ科博」間でローテーションを行い、来館者ができるだけ多様な教材に接することができるように配慮した。このような「μ科博」を活用した教育プログラムを開発し、学校の休憩時間や放課後に当たる時間帯、土曜日等に開館して当該教育プログラムを実践した。「μ科博」自体の教育効果や、学校教育、社会教育、さらには家庭教育への波及効果を検証するとともに、「μ科博」を日常的に持続可能にするための条件を検討した。 その結果、上記で述べた活動により、家庭内での科学技術への関心が高まり、親子、夫婦の話題づくりに繋がっていること、地域の教育力が向上しつつあると住民が実感していること、指導ボランティア自身も生きがいを見出していること、また、保護者の科学への関心が児童生徒の興味持続に大きく影響すること、などが明らかとなった。さらに、個々の指導ボランティアへの、負荷とモチベーションについての配慮が、円滑かつ持続性のある活動に寄与することが示唆された。
|