研究課題/領域番号 |
23650581
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
齋藤 玲子 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30345524)
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研究分担者 |
木村 義成 大阪市立大学, 文学研究科, 講師 (20570641)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ジオデモグラフィクス / インフルエンザ / 疫学 / 流行 / 小地区プロファイル / 罹患率 |
研究概要 |
本課題では、これまでなかった全く新しい試みとして、ジオデモグラフィクス(小地区プロファイル)と、一地方都市のインフルエンザ全数登録調査を組み合わせ、インフルエンザ流行に関連する社会・人口的な背景要因を分析する。 長崎県諫早市医師会で行っているインフルエンザの全数登録調査のデータと、代表的なジオデモグラフィックス分類であるモザイク・ジャパン(全国約2万の町丁・大字の住民特性があらかじめ11の大グループと50の小グループに分類されている)の住民特性分類を結合し、インフルエンザ発生とその背景要因を分析した。 平成23年度は、2010-2011年シーズンの長崎県諫早市でのインフルエンザの流行状況解析とジオデモグラフィクス解析を行った。 結果として、2010-2011年はインフルエンザ患者は10,321例登録された。A型(74.1%)、B型(19.8%)の混合流行で、A型は2011年3週に高いピークがあり、B型は3月から流行が始まり春休みでいったん患者数が少なくなったものの4月末の17週にピークを迎えた。A型、B型ともに、7-12歳の小学生の年代の罹患率(それぞれ226人/人口1000人、112人/人口1000人)が最も高く、小学生を中心に流行していることが判明した。 A型インフルエンザの発生は勤労者世帯と、公団居住者地域で有意差を持って多く、逆に農村およびその周辺地域と過疎地域で少なかった。B型インフルエンザは勤労者世帯で多く、地方都市型、職住近接・工場町、過疎地域で有意に少なかった。 A型は発生の多いあるいは少ない地域は過去の我々の解析と同様のプロファイルを示したが、B型はその年によって発生多少を示すプロファイルが異なり、一定の傾向をとりにくいことが判明した。A型とB型では流行に関わる社会的要因が違う可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では、長崎県諫早市の諫早医師会と協力して、インフルエンザの流行しやすい(または少ない)地区のプロファイルを明らかにすることが目的である。 諫早医師会との協力は、良好であり、2010年12月から2011年5月までのインフルエンザシーズン中に毎週罹患患者のリストが新潟大学に送付されていた。そのリストから毎週諫早市におけるインフルエンザ患者の分布地図をA型、B型にわけて作成し、医師会に地図をフィードバックした。 2010-2011年シーズンは1万名をこえるインフルエンザ患者が登録され、その情報から、流行曲線、年齢分布を解析した。 大阪市立大学と協力してジオデモグラフィックス解析を行い、2010-2011年シーズンのインフルエンザA型、B型の流行地域の住民特性を明らかにした。 また、翌年の2011-2012年(平成23年度)のインフルエンザ・シーズンについても同様に、諫早医師会から患者リストが毎週送付され、患者地図を作成した。3月末時点で、まだインフルエンザの流行が続いているため、疫学解析やジオデモグラフィックス解析は平成24年度に行う予定である。このため、研究の進捗はおおむね順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、2011-2012年(平成23年度)のインフルエンザ・シーズンに登録されたインフルエンザ患者(約7000名)について、流行曲線、年齢分布の解析を行い、ジオデモグラフィックス解析により、その年のインフルエンザ流行が多い(または少ない)地域の特徴をみる。前年度の流行地区との相違を検討する。ジオデモグラフィクス解析以外に、地理情報システム(GIS)を用いて、学区ごとの地域伝播の特徴、ワクチン接種との関連、感染伝播の経路などについて、解析を行う。これまで調査を行ってきた長崎県諫早市以外に、新潟県佐渡市でも過去に同様の調査を行っていたため、その結果を解析する。最終年度であるため、これまでの研究の結果を総括し、学会発表や英文論文で結果の公表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
a.インフルエンザ患者情報の収集:諫早医師会所属の医療機関へ受診したインフルエンザ患者の、年齢、性、発症日、受診日、居住地(町丁・大字単位)、迅速キット結果(A型、B型、臨床診断)、感染契機(学校・職場)などの情報を各医院で収集し、医師会でデータベースに入力する。(小野)諫早医師会との打ち合わせのため、長崎への国内旅費が必要である(齋藤、菖蒲川、鈴木翼) b.患者地図作成:データベースファイルを諫早医師会から1週間に一回新潟大学に送付。インフルエンザ患者の町丁・大字レベルの居住データからとArcGISのアドレスマッチング機能を用いて患者住所をポイントデータに変換する。迅速キット結果から、A型・B型の型別のインフルエンザの週間地図を作成し、医師会に結果を還元する。(齋藤、鈴木翼、菖蒲川)c. ジオデモグラフィクスデータと患者データの解析:インフルエンザ患者の居住地(町丁・大字レベル)とモザイク・ジャパンの基盤地図を、町丁・大字コードでデータをリンクする。患者データから、各地区プロファイルの観測値と期待値を計算する。データ地図の購入が必要である。(齋藤、木村、中谷、鈴木宏、鈴木翼、菖蒲川)d. 地理情報システム(GIS)を用いて、学区ごとの地域伝播の特徴、ワクチン接種との関連、感染伝播の経路などについて、解析を行うため、統計ソフト、画像編集ソフトなどの購入が必要である。 学会発表や情報収集の目的で、国内学会に参加するため、国内旅費が必要である。英文論文を発表するために、論文投稿料が必要である。 連携研究者:中谷友樹(立命館大学文学部)、鈴木宏(新潟青陵大学看護福祉心理学部)研究協力者:小野靖彦(諫早医師会理事)、菖蒲川由郷(新潟大学・助教)、鈴木翼(新潟大学・大学院生)
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