研究課題/領域番号 |
23650582
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鈴木 康弘 名古屋大学, 減災連携研究センター, 教授 (70222065)
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研究分担者 |
杉戸 信彦 名古屋大学, 環境学研究科, 研究員 (50437076)
石黒 聡士 名古屋大学, 災害対策室, 研究員 (90547499)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 活断層 / リモートセンシング / 変動地形学 / 写真測量 / 計測システム |
研究概要 |
本研究は、活断層・変動地形研究に有効な高解像度DEMステレオ計測システムを開発するため、システム開発とその適用研究を同時に進め、互いにフィードバックさせることを目的とする。 システム開発においては今年度、実体視画像の改良を行い、標高と起伏を考慮した画像、複数の起伏からの合成画像の作成、および水部らしい色付け、傾斜角、方位などをDEMに与えることが可能となった。表示機能に関しては、航空レーザ測量のDEMやオリジナルデータから鳥瞰表示やステレオペア画像を作成し、かつ動きをつけて2Dディスプレイ・3Dディスプレイ両者にて容易に閲覧できるようにした。機器選定もすすめ、ムービーやオリジナルの閲覧システムによって専門外であっても地形を容易に3次元的に閲覧できる態勢を整えた。各種データインポート機能についても、所定の形式のベクトル、注記などを読み込みプログラム上で表示が可能となった。ここまでの作業は自主開発ですすめられたうえ、計画以上の成果が得られており、データインポート機能をさらに充実させる点や解析機能の開発については次年度に持ち越す結果となった。 上記技術の適用可能性を探るため、熊野市鬼ケ城の地震性隆起海岸地形に適用し検討を行った。鬼ケ城はいわゆる海溝型地震との関係が指摘され急ぎ調査が必要となった地域である。鬼ケ城においてはオーバーハングした地形を対象とするため斜め方向のLiDAR計測データが取得されており、これを用いて地形解析を実施した。その結果、海成段丘面・海食洞が数段発達しており、離水後に風蝕の影響で小規模な平坦面が様々な高さに形成された可能性が示された。熊野周辺の波状変形については、地震発生確率や意義を鑑みて鬼ケ城調査を先行させたため次年度検討課題とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
システム開発・適用研究の両者について着実に成果を得た。とくに鬼ヶ城における新規LiDAR計測による解析は本システムの有効性を確認するとともに、これまでは重視されていなかった地震性地殻変動の発見につながり、南海トラフ地震を考える上で重要な知見を得た。なお、今年度は、(1)実体視画像の改善(標高と起伏を考慮した現状の彩色に加え、傾斜方向を加味した彩色等、断層変位地形や地すべり解析等、目的に特化したDEM画像の彩色の検討)、(2)表示機能(3Dディスプレーへの適応)、(3)各種データインポート機能(DEM以外のデータの実体視表示・データインポート)、(4)解析機能(中心投影になってしまったデータから解析をする機能、地形情報に応じた着色機能、地形面対比補助機能の開発)を予定していた。このうち(1)から(3)については予定通り開発できたが、計測作業が当初予定よりも多く実施したため、(4)については次年度に持ち越すこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度から持ち越した上述の目標(解析機能の開発・検討)を含め、研究目標達成のため計画にしたがって研究を推進する。平成24年度は、活断層調査に適用する際に必要な、システム改良を集中的に実施する。また、活断層調査に現状のシステムを利用して、(1)詳細な活断層線情報の取得と精密断層図の作成、(2)断層変位量分布図の作成、を試行的に実施し、現地調査を実施して取得されたデータ精度を検証する。本研究においては、タイプの異なる変位地形に適用して、有効性を確認するため、三重県熊野(熊野断層)、長野県茅野(糸静線)、岐阜県坂下(阿寺断層)を例に検証作業を行う。 また、出力データフォーマットの多様化、システム共有、インターネットを利用した情報共有等のシステム改良を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
システム開発においては平成23年度、別途自主開発で進めたLiDAR計測が進み、そのデータを本システムを用いて解析することによって大きな成果が得られた。このため、本システム開発の目標の一部を次年度に持ち越した。適用研究についても鬼ケ城調査を先行して実施し成果を得たため、当初予定した熊野周辺の波状変形については次年度に持ち越した。研究費の持ち越し分はこれらの遂行に当てることとし、次年度目標とあわせて達成を目指す予定である。
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