研究課題/領域番号 |
23650582
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鈴木 康弘 名古屋大学, 減災連携研究センター, 教授 (70222065)
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研究分担者 |
杉戸 信彦 名古屋大学, 環境学研究科, 研究員 (50437076)
石黒 聡士 名古屋大学, 災害対策室, 研究員 (90547499)
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キーワード | 活断層 / リモートセンシング / 変動地形学 / 写真測量 / 計測システム |
研究概要 |
本研究は、活断層・変動地形研究に有効な高解像度DEMステレオ計測システムを開発するため、システム開発とその適用研究を同時に進め、互いにフィードバックさせることを目的とする。 システム開発として平成24年度は、①立体化アルゴリズムの改良、②リアルタイム処理、③対応データ形式の拡充を行った。①立体化アルゴリズムの改良においては、中心投影画像方式から比高変位方式(高さに応じた視差を画像に与える方式)へ変更することで、観察作業プロジェクト一式のステレオ画像ペアの画素数が飛躍的に増え、判読者が一枚の画像(または映像)で観察できる領域(または空間解像度)を向上させることができた。また、②データのリアルタイム処理が可能となったため、解析時に直接DEMデータの値を参照することができ、応用面の利便性が向上した。さらに、高さの強調や領域マスクなど、作業に応じた補助機能を追加した。③対応可能なデータを、DEMだけでなく写真や地質図などのラスターデータにも拡張した。これにより写真等を立体視できるようになったため、判読の際に利用可能な情報が飛躍的に向上した。 上記技術の適用可能性を探るため、糸魚川静岡構造線で実施された航空レーザ測量によるDEMに適用し検討を行った。この地域では平成18年度に研究代表者が取得したLiDARデータがあるため、これを再処理した。その結果、かつては判読できなかった微細な断層変位地形を塩尻付近において明瞭に確認することが可能となった。その成果に基づいて24年12月に現地掘削調査が行われ、従来未確認であった活断層トレースを実証することができた。これは本システムの有効性の高さを確認することにつながる。ただし、GISデータの出力フォーマットや情報共有の仕方についてはさらに検討の余地があり、次年度検討課題とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
システム開発・適用研究の両者について着実に成果を得た。2011年4月11日に起きた福島県浜通りの地震の際に出現した地表地震断層に関するデータを解析し、表示機能・解析機能の有効性を確認した。さらに、糸魚川-静岡構造線の塩尻付近のDEMを解析し、新たな活断層トレースの確認および掘削計画に資する有益な知見を与えた。 当初研究計画と比較すると、昨年度から持越した①DEM以外のデータの実体視表示、②解析機能の開発に加え、③出力データフォーマットの多様化、④システムの汎用化を予定通り実施した。しかし、⑤情報共有化のための開発については検討未了のため、次年度に持ち越すことにした。
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今後の研究の推進方策 |
23年度、24年度に構築されたシステムの有効性を検証し、さらにシステム改良の余地を考察する。また、変動地形研究に実際に適用して累積変位量および地震時変位量分布の詳細データを精力的に取得する。結果をとりまとめて成果の発表を行い、システムの普及を図る。これまでの重要な成果として、①南海トラフ周辺の海底活断層の解析、②三重県熊野地域の波状変形および地震性隆起地形の解析、③2011年福島県浜通りの地震断層の解析、④糸魚川-静岡構造線の茅野・坂室付近の変位地形および塩尻付近の新トレースの解析がある。 今年度は、適用研究を精力的に行い、システムを経由し研究者、開発者、さらには判読結果を説明される側(専門家以外)が有効に情報をやり取りするために必要な項目を精査し、システム改良を実現する。複雑な変位地形が存在する糸魚川-静岡構造線の御射山神戸(富士見)付近を新たに検討地域に加える。また、②解析機能の改善(断層変位地形や地すべり解析等、目的に特化したDEM画像の彩色の検討)を行う。対象地域としては広域的に詳細なLiDARデータが整備されている岐阜県について、活断層を対象とし本システムの適応性を検討する。システム開発担当者と判読者が常時意見交換できる環境を用意している。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、現地調査費、DEMおよび画像データ取得費、ならびにデータ加工費に利用する。現地調査は、これまでの調査地域に関する補足のほか、新たに岐阜県の御母衣断層、跡津川断層、糸魚川-静岡構造線の御射山神戸(富士見)付近等を対象とする。
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