研究課題/領域番号 |
23650587
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福田 智一 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40321640)
|
キーワード | 人工多能性幹細胞 / 脱メチル化 |
研究概要 |
【目的】本研究はiPS細胞と悪性腫瘍の性質の共通性に注目し、iPS細胞を利用して転写制御領域の脱メチル化を誘導する低分子化合物を探索する実験系を樹立することを目的とした。本研究はiPS細胞に認められる外来性遺伝子のサイレンシングに与える影響を指標に、新たな脱メチル化剤を探索するシステムの樹立を目的とした。iPS細胞は転写制御領域を高頻度にメチル化によりサイレンシングする特徴を持ち、この特性を本研究で利用した。 【研究成果】計画当初は、iPS細胞化する際のサイレンシングを検出するために、蛍光蛋白質(EGFP)を使用することを予定していたが、より感度良く加えて培養上清より簡便に検出出来る実験系を目指し、分泌型ルシフェラーゼ(Metluc)とカイアシ由来の蛍光蛋白質(copGFP)加えて薬剤耐性遺伝子(Neo)を2Aペプチドで連結したMetluc-copGFP-Neoのマーカー遺伝子を開発した。まず、初期段階としてマウスの線維芽細胞へMetluc-copGFP-NeoカセットをLTRプロモータの支配下のレトロウィルスにて導入した。その後、山中4因子を含むレンチウィルスであるSTEMCCAの導入により、iPS細胞を誘導した。得られたコロニーを元に合計5株のマウスiPS細胞株を得た。それらのiPS細胞において初期に導入したマーカーはiPS化する前と比較し、培養上清におけるルシフェラーゼ活性では1/100, リアルタイムPCRを用いた検出では1/1000にサイレンシングされていることが明らかになった。iPS細胞化する際のエピジェネティックな変化によって新規に開発したマーカーが不活性化したことが明らかになった。この結果を元にゲノムの脱メチル化剤である5-Aza-dCの暴露を行い、ゲノムの脱メチル化活性を検出可能であるか検討中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的であるゲノムのエピゲネティックな変化を検出するiPS細胞の実験系の構築は達成した。しかし研究遂行する初年度は研究実施機関である東北大学が東日本大震災からの被害からの復旧に大きく労力を割かれた年度であり、研究計画の遂行が大きく遅延した。このために陽性対象物質である5-Aza-dCによる評価が遅延した。
|
今後の研究の推進方策 |
一部、遅延したゲノムの脱メチル化低分子化合物、特に陽性対象物質である5-Aza-dCによる暴露実験を今後進行する予定である。iPS細胞への化合物の細胞毒性が生じる可能性があるが、その場合はiPS細胞を分化させる実験系、胚様体形成を行う別の実験系において検出を試みる予定である。陽性対象である5-Aza-dCでの結果を元に、化学物質のライブラリーから新規脱メチル化活性を持つ化合物のスクリーニング系を稼働させる予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
培養細胞用血清 (50千円 X10 =500千円) 細胞培養用ディッシュ (20千円 X 10= 200千円) 低分子シグナル阻害剤 (50千円 X 6= 300千円)
|