研究概要 |
本研究ではマウス線維芽細胞にLTRプロモータ制御下に分泌性ルシフェラーゼを使用したレトロウィルス由来のレポーターを導入した。分泌性ルシフェラーゼは培養上清から簡便かつ高感度にその活性を検出することが出来る。この細胞へ山中リプログラミング4因子を導入しiPS細胞への誘導した。合計で20を越えるマウスiPS細胞様形態を示す株の樹立に成功、アルカリフォスファターゼ活性、Nanog, Oct3, SSEA-1の陽性を示し、得られた細胞株はiPS細胞であるデータを得た。 興味深いことに、プログラミングの程度が高い品質の高いiPS細胞は線維芽細胞の段階で導入された分泌性ルシフェラーゼ遺伝子が強くサイレンシングしているが、リプログラミングの程度が低いiPS細胞はルシフェラーゼ遺伝子のサイレンシングが行われないまま、高い活性が保持されていた。すなわち我々は分泌性ルシフェラーゼの利用により、培養上清中からiPS細胞のサイレンシングを鋭敏に検出出来る実験系を樹立したと結論した。ゲノムのメチル化状態を変化させることが知られている5-Aza-dCを分泌性ルシフェラーゼマーカーがサイレンシングしているiPS細胞株に暴露したが、フィーダー細胞上で幹細胞の未分化状態を保持する限り、マーカー遺伝子の再活性化が検出できない結論に至った。加えてマウスの幹細胞においてLTRプロモーターはメチル化だけではなく、ESETと呼ばれる転写の不活性化する仕組みが存在することが近年、明らかになっている。従ってiPS細胞を未分化状態ではなく、分化状態に移行させることで脱メチル化活性を検出出来る可能性があり、胚様体(EB)を用いた検出を試みている。
|