研究課題/領域番号 |
23650589
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
高田 江里子 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (50300942)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | DNAメチル化 / トランスジェニックマウス / 検出系 |
研究概要 |
DNAメチル化異常はがんなどのヒト疾患に関与しているが、その誘発因子に関する知見は限られている。メチル化異常誘発に炎症細胞の関与が重要視されており、新規メチル化異常誘発要因の同定には、炎症細胞等を含む間質細胞と上皮細胞の相互作用を加味したin vivo検出系の構築が必要である。本研究では、異常メチル化を検出するトランスジェニックマウスを開発することを目的とする。 23年度は、メチル化検出のマーカーのためのプロモーター領域CpGアイランド(CGI)を選定することを目標とした。まず、検出系の有効性検証に用いるマウス潰瘍性大腸炎モデルにおいて、異常メチル化が誘発されやすいCGIの同定を試みた。雄Balb/cマウスにazoxymethane(AOM, 10 mg/kg, 腹腔内1回投与)、 及び、dextran sodium sulfate (DSS, 1.5w/v, 飲料水1週間投与) により15週後に大腸がんを誘発、摘出した。Methylated DNA immunoprecipitation (MeDIP)-CGIマイクロアレイ法によるゲノム網羅的メチル化解析により、大腸がんでメチル化されるCGIを15個分離した。しかし、これらは遺伝子内、5'上流域または3'下流域に存在し、プロモーターに存在するものは一つも同定されなかった。 この結果の理由として、まず、ヒト大腸がんと比較して、マウス大腸がんではメチル化異常が誘発されるCGIの数が極めて少ないことが考えられる。また、今回用いたMeDIP-CGI マイクロアレイ法が定量性に乏しいことも関与している可能性がある。近年、MeDIP-seq法等の定量性に富むメチル化解析法が開発されており、今後、これらの手法を用いて、再度メチル化異常が誘発されやすいプロモーター領域CGIの同定を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒトの大腸がんと比較し、マウスの大腸がんではDNAメチル化が誘発され易いプロモーター領域CpGアイランド(CGI)の数が予想以上に少なく、検出のマーカーとなり得るプロモーターが予定通りに同定されなかった。その理由として、ヒトと異なり、マウスではメチル化された遺伝子が少ないこと、また、今回用いたMeDIP-CGI マイクロアレイ法が定量性に乏しいことが考えられる。近年、MeDIP-seq法等の定量性に富むメチル化解析法が開発されており、今後、これらの手法を用いて、再度メチル化異常が誘発されやすいプロモーター領域CGIの同定を試みる。
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今後の研究の推進方策 |
[平成24年度] AOM及びDSSにより誘発したマウス大腸がんと正常大腸粘膜のゲノムDNAを用いてMeDIP-seq法よるゲノム網羅的メチル化解析を行い、大腸がんで特異的にメチル化される遺伝子を分離する。1) 血球細胞ではメチル化されず、大腸上皮細胞特異的に容易にメチル化されること、2) メチル化状態と下流遺伝子の発現状態とに良好な相関関係が認められること、3) 下流遺伝子の転写レベルが高いこと、の条件を満たすプロモーター領域CGIを選定する。選定されたプロモーター領域については、LacI発現ベクター及びlacO-Luc発現ベクターを構築する。これらベクターを培養細胞に導入、選定したプロモーターによるLacI発現下でのLuc発現の消失、及び、IPTG添加による誘導が可能であることをin vitroの系で確認する。[平成25年度]トランスジェニックマウスを作製し、各臓器でのLacI及びLucの発現を確認する。特に大腸粘膜での発現があることを確認した後、両系統を交配し、ダブルトランスジェニックマウス (LacI+lacO-Lucマウス) を作製、大腸粘膜におけるLuc発現の消失を確認する。その後、DSS投与により大腸に潰瘍性大腸炎、その結果として、大腸粘膜上皮細胞に異常メチル化を誘発する。マーカーとして用いたプロモーター領域CpGアイランドにメチル化が誘発されることにより、Lucの発現が誘導されるか否かを経時的に解析し、異常メチル化検出系としての有用性を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ゲノム網羅的メチル化解析技術分子生物学実験細胞培養実験
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