DNAメチル化異常はがん等のヒト疾患に関与しているが、その誘発因子に関する知見は限られている。メチル化異常誘発に炎症細胞が深く関与しており、新規メチル化異常誘発要因の同定には、炎症細胞等を含む間質細胞と上皮細胞の相互作用を加味したin vivo検出系の構築が必要である。本研究では、異常メチル化を検出するトランスジェニックマウスを開発することを目的とした。 平成24年度までに、1) メチル化検出のマーカーのためのプロモーター領域CpGアイランド(CGI)選定、2) このCGIの下流にLacI翻訳領域を挿入したLacI発現ベクター、及び、lacO-EGFP発現ベクターの構築、3) 培養細胞への二種のベクター導入を行ない、適したクローンを数系統分離した。平成25年度は、作製した細胞株が検出系として作動するか否かの評価をした。DNAメチル化を誘発する薬剤が存在しないため、評価は、細胞を1) 様々な培養条件下で長期間培養する、2) ヌードマウス皮下に移植腫瘍を形成させる、の二種の実験で行った。1) では、培養条件を栄養不良・過剰にして数種の条件で行ったが、50回継代を繰り返してもメチル化は誘発せず、評価できなかった。一方、2)は腫瘍形成過程で生じる炎症細胞等のメチル化誘発への関与を期待したものだったが、実際、マウスのin vivo蛍光イメージングで移植腫瘍の一部で緑色蛍光が観察された。腫瘍片の初代培養細胞では緑色蛍光を有した細胞が認められ、それらの細胞でプロモーターCGIにメチル化が誘発されていた。緑色蛍光が観察されなかった腫瘍では、メチル化は誘発されていなかった。以上より、構築した細胞株はメチル化の誘発を緑色蛍光として検出できると判定した。 本研究で構築した細胞株はDNAメチル化誘発を検出できる系である可能性があり、今後、トランスジェニックマウス作製への応用が期待できる。
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