研究課題/領域番号 |
23650592
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
三木 義男 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (10281594)
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研究分担者 |
中西 啓 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 特任准教授 (50321790)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 乳がん / MT1-MMP / BRCA2 / 中心体 |
研究概要 |
我々はヒト乳癌由来のMCF7細胞の細胞調製液に対してBRCA2抗体によるイムノブロットを行った場合、野生型BRCA2(分子量:384 kDa)の他に分子量250 kDaに相当するバンドが検出されることを見出した。これは他の乳癌由来のSK-BR-3細胞や子宮頸癌由来のHeLaS3細胞でも同様に観察される。しかし、良性乳腺繊維嚢胞症由来のMCF10A細胞や正常乳腺上皮由来のHMEC細胞からは検出されなかった。本研究では、この250 kDaのタンパク質に注目し、これがBRCA2由来のタンパク質であることを検証し、その形成機序の解明を通してBRCA2の新しい生理的機能を見出すことを目的とした。初めに250 kDaのタンパク質の同定を行った。MCF7細胞の細胞調製液をSDS-PAGEに展開して250 kDaのタンパク質を抽出し、多重反応モニタリング法(MRM)を用いてBRCA2タンパク質を同定した。次にこの250 kDaの切断型BRCA2の形成機序について検討したところ、これまでの知見から、BRCA2を切断する可能性のあるプロテアーゼとして細胞膜結合型マトリクスメタロプロテアーゼMT1-MMPを候補に考えた。そこでBRCA2がMT1-MMPの基質であるかを検証するため、プロテアーゼデータベース検索を行いMT1-MMPによるBRCA2の切断部位を推定した。この切断部位は、BRCA2のN末から約250 kDaの位置に存在し、またこの推定切断部位を含む領域のリコンビナントタンパクを基質とした in vitro での実験系で、MT1-MMPによるリコンビナントタンパクの切断を確認した。この切断は、MT1-MMPの阻害剤によって抑制され、さらに合成ペプチドを作製して詳細な切断部位の同定を行った。以上のことから癌細胞でBRCA2がMT1-MMPによって切断されることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究成果と研究の背景をもとに、本研究はMT1-MMPによって切断されたBRCA2タンパク質の生理的機能を調べ、また、MT1-MMPの中心体での新しい基質を探索し、それらの情報を基盤にMT1-MMPの中心体での新機能の解明へと発展させる。研究期間内に以下のことを明らかにする計画であった。1) MT1-MMPによる切断BRCA2と結合するタンパク質を同定する。2) MT1-MMPによるBRCA2の切断部位を同定する。3) BRCA2の切断部位特異的認識抗体を作製し、細胞周期における細胞内の局在を観察する。4) 上記抗体を用いて、正常と癌組織おいて切断型BRCA2の発現量を比較する。5) 中心体におけるMT1-MMPの新しい基質を探索する。 我々は、BRCA2の切断部位特異的認識抗体の作製を完了した。これより、研究計画は順調に進んでいると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
切断型BRCA2の発現、および機能解析のため切断部位のペプチドを抗原として作製した切断型認識抗体(ポリクロ-ナル抗体)の特異性を確認後、組織アレイを用いて、正常と乳癌組織での切断型BRCA2の発現比較を行うため組織免疫染色を行う(正常、および乳癌組織での切断型BRCA2の発現の比較)。また、野生型をBRCA2と切断型BRCA2の局在の比較を行うため間接蛍光抗体法を用いて乳癌細胞株でその局在を観察し、また癌の浸潤に切断型BRCA2が影響を及ぼすのかを明らかにする(切断型BRCA2の細胞内の局在および機能解析)。次いで、切断型BRCA2が細胞周期依存的に起きるのかを調べるため、S期に同調させたMCF7細胞を経時的にサンプリングして、イムノブロットにて切断型の検出を行う(切断型BRCA2の細胞周期での切断時期の解析)。その後、切断型BRCA2の生理的機能を調べるため、これらのポリペプチドと結合するタンパク質を同定する。切断部位を決定後、切断型BRCA2発現系を構築し、細胞内で発現して免疫沈降法で沈降物を質量分析計で同定する(切断型BRCA2と結合するタンパク質の同定)。最後に、浸潤性のMCF7と非浸潤性のMDA-MB231細胞での切断型BRCA2の発現を比較する。さらに切断型BRCA2を過剰発現させた時に細胞の遊走、および浸潤能に影響を及ぼすのかを調べる(切断型BRCA2を細胞内で過剰発現させて、細胞の浸潤性への影響を調べる)。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究の推進方策に則り、組織アレイ作製、免疫染色などの試薬を購入する。また、後半では培養細胞を用いた実験が主になるため細胞培養関連試薬・機器、生化学的実験試薬類などを購入する。さらに、質量分析装置による解析を計画しており、そのための消耗品を購入する。
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