ヒトのがんではミトコンドリアの機能障害が高頻度に認められるが、その意義はこれまでほとんど不明であった。今回、ショウジョウバエ上皮において、ミトコンドリアの機能障害ががん遺伝子Rasの活性化と協調して周辺組織の腫瘍悪性化を引き起こすことを見いだした。そのメカニズムとして、ミトコンドリア機能障害とRasの活性化が起こると活性酸素種 (ROS) が大量に産生され、これがJNKシグナルの活性化を介してがん抑制経路Hippo経路を不活化し、分泌性増殖因子Upd(IL-6ホモログ分子)やWingless(Wntホモログ分子)を産生・放出することで周辺の良性腫瘍が悪性化することを明らかにした。
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