研究課題/領域番号 |
23650597
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
尾崎 充彦 鳥取大学, 医学部, 准教授 (40325006)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | がん幹細胞 / 微小重力 |
研究概要 |
「微小重力環境下での培養法」により純度の高い「がん幹細胞集団」を回収する系の構築を目的として以下の検討を行った。がん幹細胞は、ABCトランスポーターの高発現により細胞内に取り込まれた抗がん剤を積極的に排出することで、薬剤耐性能を有している。この性質を利用し、ヒトがん細胞株6株を抗がん剤(6種)添加により、非がん幹細胞を死滅させる一方でがん幹細胞が生き残る条件を検討した。ヒト大腸がん細胞株(LoVo)およびヒト膵癌細胞株(Panc1)に抗がん剤(CDDP, Gemzar, Taxol, ドキソルビシンおよびアリムタ)を添加して1週間培養後、顕微鏡下で生細胞がごく僅かに確認でき、その後2週間抗がん剤無添加培地中において残存した細胞からコロニー形成する条件を絞った。その結果、LoVoおよびPanc1いずれもCDDP 30μM、Gemzar 100nMが至適と判断した。 このコロニーを3Dクリノスタット(重力分散型人工無重力装置)にて微小重力環境下での培養を2週間おこない、通常の培養環境をコントロールとして、細胞増殖能を検討した。クリノスタットを用いた培養により幹細胞は、幹細胞性を維持したまま増殖能が促進することが予想される。細胞数をカウントした結果、LoVoはCDDP 30μMで処理後、Panc1はGemzar 100nMで処理後クリノスタットで培養したときに、コントロールと比較し細胞増殖能が高くなることを見出した。微小重力環境下での培養後、細胞は点在性に円形のコロニーを形成して増殖しており、単一細胞由来のクローンの可能性が示唆された。これらの細胞を回収し、免疫不全動物への接種により造腫瘍性を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は、(1)抗がん剤処理により非がん幹細胞を死滅させがん幹細胞のみにする条件を決定、(2)3Dクリノスタットによる微小重力環境下での培養によりがん幹細胞を増殖させる、(3)免疫不全マウスへの移植により10個以下の細胞で造腫瘍性を確認することを計画していた。現在、(3)へ進行したところであり、造腫瘍性の確認中である。やや遅れた理由として、(1)において、ヒトがん細胞株6株を用い、作用機序の異なる抗がん剤6種(代謝拮抗剤、微小管阻害剤、アルキル化剤、白金誘導体、トポイソメラーゼ阻害剤など)によりがん幹細胞のみを残存させる条件の検索に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
微小重力環境下での培養により純度の高い「がん幹細胞集団」を回収できていれば、10個程度の細胞移植により腫瘍形成の確認ができると予想される。現在、3Dクリノスタットによる微小重力環境下で培養した細胞を免疫不全マウスへ移植し、その経過を観察中である。造腫瘍性確認後、一連の抗がん剤処理から3Dクリノスタットによる培養を再度おこない、同様に造腫瘍性を再確認すると共に、その増殖してきた細胞の細胞表面抗原やmRNA, miRNA発現パターンなどを解析し、がん幹細胞としての特徴を検索予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養関連経費:40万円、動物実験経費:50万円、分子細胞生物学実験経費:50万円、旅費:20万円を予定している。
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