研究課題
がん研究、がん治療法開発においては、「がん幹細胞」を焦点にした解析が必要となっており、「株化がん幹細胞」が待ち望まれている。本研究では、がん細胞株由来の培養上清をiPS細胞の分化を制御する微小環境因子として添加することにより、試験管内でがん幹細胞様細胞(iPS-CSCs)へと変化させ、数種類の「株化がん幹細胞」の作成に成功した。マウス、及びヒトがん由来の細胞株の培養上清を含む条件でマウスiPS細胞を4週間培養し、生存していた細胞をヌードマウス皮下に移植すると悪性腫瘍(癌腫様)を形成した。この細胞は自己復性能、多分化能を有しており、がん幹細胞としての性質を獲得した細胞であることを示した。使用したがん細胞の培養上清の由来により、分化能などが異なる細胞が得られている。さらに、ルイス肺がん細胞由来のエクソソーム画分を生成し、分化途上にあるiPS細胞に供し4週間培養して得た細胞は、ヌードマウス皮下で脂肪肉腫様の腫瘍を形成し、さらには腹腔内へ浸潤し腫瘍を形成するケースも観察された。本研究で作製したがん幹細胞の一つであるmiPS-LLCcm細胞(ルイス肺がん細胞の培養上清によりがん幹細胞化)の自己複製、分化能(特に血管内皮細胞)を評価したところ、がん幹細胞の自己複製は、がん幹細胞より分化したがん細胞、血管内皮細胞により増進されることを見いだし、この効果は、部分的にNotch経路に依存していることを明らかにした。さらに、がん幹細胞の分化系統も分化がん細胞からのフィードバックにより制御されており、がん幹細胞の運命を制御する「がん幹細胞ニッチ」は、がん幹細胞自らが、分化がん細胞を生み出し形成していることを示した。
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Internatinal Journal of cancer
巻: 135 ページ: 27-36
doi: 10.1002/ijc.28648.
American Journal of Cancer Research
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