本研究の目的は、VEGF阻害治療によって活性化される「悪性腫瘍化RNAプログラム」を明らかにして、これら悪性腫瘍化RNAファミリー(Vegf ncRNAs)を標的とした新たな治療法開発のための学術的基盤を確立することである。本研究の意義は、Vegf ncRNAsを効果的に阻害できる創薬シーズを得ることである。Vegf ncRNAs阻害剤を開発出きれば、アバスチンを含む多くのVEGF分子標的薬によって誘導される薬剤抵抗性の問題を大幅に改善できることが期待される。 平成24年度は、全てのvegf ncRNAを分子標的としたsiRNA(si-ncRNAs)のin vivoにおける抗腫瘍効果の評価を行った。腫瘍内のvegf ncRNAsをノックダウンすると、腫瘍細胞におけるp53の発現レベルが増加し、その結果、p53によって制御される一連の遺伝子群(アポトーシス誘導遺伝子群の増加、および血管新生促進遺伝子群の抑制)が認められた。その結果、アバスチンによる血管新生阻害効果と、抗がん剤5-FUによる腫瘍増殖の抑制効果が亢進した。 次に、ヒト大腸がん組織におけるvegf ncRNAsの発現レベルについて検討した。vegf ncRNAsは癌部特異的に発現しており、化学療法(アバスチン+5-FU)によって発現は著明に増加していた。
|