研究概要 |
ミトコンドリア電子伝達系複合体IIのSDHCサブユニットにアミノ酸点変異(V69E)を導入したマウス胎児細胞株とその自然形質転換株、およびそれらのコントロール株を取得した。長期間の軟寒天培養中に取得された自然形質転換株は、樹立後凍結保存し、融解後再培養を開始して1~2か月間は、樹立時の形質を再現できないことを確認した。さらに、このような変化はエネルギー代謝制御に影響されるエピジェネティクス変化に依存していることを確認した。最近、神経膠腫(グリオーマ)や骨髄性白血病等において、イソクエン酸脱水素酵素(IDH: isocitrate dehydrogenase)の遺伝子変異が2-ヒドロキシグルタル酸(2-HG)の蓄積を誘導し(Nature, 2009. 462: 739-744, Cancer Cell, 2010. 17: 225-234)、ヒストン脱メチル化酵素の阻害を惹き起こすことが続けて報告されている(Cancer Cell, 2011. 19: 17-30, EMBO reports, 2011. 12: 463-469, Nature, 2012. 483: 474-478, 479-483, 484-488)。我々は、ミトコンドリア電子伝達系複合体II変異がIDH変異と同様にして、パラガングリオーマなどの造腫瘍発生に寄与していると考え、これらの変化を癌幹細胞の特性化として位置付け、今後の研究推進に尽力していく。当該研究に関わる一部の成果について、現在論文投稿中である。
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