パラガングリオーマ(家族性傍神経節腫; PGL3)の原因遺伝子として報告されているミトコンドリア電子伝達系複合体IIのSDHCサブユニットにアミノ酸点変異(V69E)を導入したマウス胎児細胞株とその自然形質転換株、およびそれらのコントロール株を取得した。 長期培養中に取得された自然形質転換株は、樹立後凍結保存し、融解後に再培養を開始して1~2か月間は、樹立時の形質を再現できないことを確認した。このような変化はエネルギー代謝制御に影響されるエピジェネティクス変化に依存していることを確認した。さらに、これら自然形質転換株をヌードマウス皮下移植後に腫瘍化した組織細胞を再びin vitro培養することで癌微小環境を再現した。その結果、低酸素環境のみを再現した場合より、低酸素・低pH両環境を再現した培養環境において腫瘍細胞は安定した細胞分裂・増殖を示すことが示された。 本研究から、パラガングリオーマなど大部分が良性腫瘍である腫瘍細胞は偽癌幹細胞の特徴を有していることを示唆する成果を得た。今後の研究により、腫瘍の根幹を叩く分子標的治療薬や治療法の開発の一端を担う、あるいはそれらの研究推進に貢献し得る成果が得られると期待される。
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