研究概要 |
癌幹細胞は癌の増殖、浸潤、転移、治療抵抗性、再発において中心的役割を担っており、近年癌幹細胞に関する研究が世界的規模で広く行われている。しかし、癌幹細胞を分離し採取しても、通常の培養環境下では分化してしまい、生体内の環境とは大きく異なる状態での現象だけしか捉える事ができない。本研究では3次元培養下における癌幹細胞の動態や癌幹細胞の保持について検討する。 平成23年度は、低接着プレートを用いたスフェア形成法を行った。スフェア形成法は幹細胞性の解析のために用いられている方法である。ヒト膵癌培養細胞を低接着プレートで培養すると、スフェアを形成した。スフェア形成細胞を分離し解析を行ったところ、非スフェア細胞にくらべて、細胞増殖の低下、細胞遊走の亢進、マウス腫瘍形成能の亢進を示した。共焦点レーザー顕微鏡にて、スフェア形成細胞では、nestin, CD44, CD133, CD24, ESAといった様々な癌幹細胞マーカーの発現が確認された。Real-time PCRにて、スフェア形成細胞では、非スフェア細胞に比べて、nestin, CD44, ABCG2 mRNAの発現亢進を認めた。さらに、short hairpin RNA (shRNA) を用いてnestinの発現をknockdownした膵癌細胞では、スフェア形成能の低下が観察された。 次に、スフェアで見られる細胞内の変化を網羅的に確認するため、DNA microarrayを用いて検討を行った。その結果、スフェア細胞では、ephrin遺伝子の発現亢進が見られた。今後、nestinを含めた癌幹細胞マーカー、およびephrinについて、癌幹細胞内での動態をタイムラプス解析にて明らかにする。
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