研究概要 |
癌ウイルスであるHTLV-1やHCVなどの持続感染や、癌の存続を許す主原因であるT細胞の消耗(exhaust)から、ウイルス(癌)特異的T細胞のみを回復させる方法の開発が本研究の目的である.そこで,特定の消耗T細胞へのみ活性化遺伝子を導入するために、T細胞受容体の抗原認識部位を標的としたターゲッティング法を開発する。 本年度に、まずHTLV-1 のTaxを認識するCTLを特異的に認識するための分子を作製し,本分子が特異的にTax認識CTLを刺激してIFN-γを産生させることを確認した。本分子を表面に持つベクターを作製し、遺伝子を導入するためには、本分子が膜融合を引き起こすことが必要である。そこで、麻疹ウイルスのHとの融合分子を作製した。F蛋白質と共発現させることにより膜融合を引き起こすことを期待した。しかし、輸送効率が低く、野生型Hタンパク質の1/100しか表面膜に存在しなかった。輸送効率を上げるために以下の試みをした。1,本分子とH蛋白質の間にスペーサーアミノ酸を挿入し、個々のドメインが正しい立体構造を取りやすいようにした。2,不安定な蛋白質の輸送効率を上げる方法として知られている低い培養温度を試みた。3,F蛋白質の細胞質部分をHIV-1 Gagと相互作用できる配列に変えた。4,別経路の輸送を司るGRASP55を共発現させた。しかし、いずれの方法も効果がなかった。そこで、本分子を表面に持つリポソームを作製することに方針転換した。そのために本分子大量発現ワクシニアを作製した。
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