癌ウイルスであるHTLV-1やHCVなどの持続感染や、癌の存続を許す主原因であるT細胞の消耗(exhaust)から、ウイルス(癌)特異的T細胞のみを回復させる方法の開発が本研究の目的である.そこで,特定の消耗T細胞へのみ活性化遺伝子を導入するために、T細胞受容体の抗原認識部位を標的としたターゲッティング法を開発する。 HTLV-1 のTaxを認識するCTLを特異的に認識するための分子を作製した。本分子を表面に持つレトロ/レンチウイルスベクターを作製し、遺伝子を導入するためにはT細胞受容体と特異的に結合するだけで不十分で、ベクターとCTLの膜融合を引き起こすことが必要である。そこで、麻疹ウイルスのHとの融合分子を作製した。そして、F蛋白質と共発現させることにより膜融合を引き起こすことを期待した。しかし、通常の培養条件である37Cでは細胞表面膜への輸送効率が非常に低くかった。そこで、輸送効率を上げるために種々の試みをした。そのなかで、培養温度を33Cに下げると約50%の分子が細胞表面に輸送される事が分った.次いで、Tax認識CTL line (4O1/C8)との細胞融合能を測定するために、CFSEでラベルしたCTL lineを Fと本分子共発現細胞に重層してCFSEの拡散を蛍光顕微鏡で観察する方法を開発した.その結果、同分子は33Cと37Cの両温度でT細胞受容体を認識して細胞融合引き起こす事が分った.
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