癌患者の血清中では、癌の進行に伴い自己抗体が増加することが知られている。これらの抗体の中には潜在的に癌の診断や抗体療法に役立つ抗体の存在が期待される。そこで本研究では、われわれが独自に開発した抗体産生単一細胞からの完全ヒトモノクローナル抗体迅速単離システムを用いて、癌患者由来の抗体産生細胞一個一個から抗体遺伝子を単離し、培養細胞で発現させることによって得られた多数の完全ヒトモノクローナル抗体をライブラリー化し、個々の抗体の結合特性や機能を調べることによって、有用な癌の診断法ならびに抗体療法の開発を目指した。本年度は癌患者由来の抗体産生細胞を元に単離されたヒトモノクローナル抗体を、癌組織標本に対して免疫組織化学染色を行うことで、癌細胞と選択的に結合する抗体のスクリーニングを行った。その結果、得られた抗体の中には、ヒト由来の癌細胞と高い親和性を示すクローンが確かに存在することを見いだした。そこで現在、その特性についてより詳細な解析を進めている。
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