研究課題/領域番号 |
23650608
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
阪口 政清 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70379840)
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研究分担者 |
片岡 健 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (10293317)
村田 等 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (90579096)
許 南浩 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70142023)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | がん幹細胞 / 抗体 / 腫瘍免疫 |
研究概要 |
(具体的内容)本研究は、独自に確立したがん幹細胞クローニング技術と機能性膜タンパク質回収技術を組み合わせることで、選択的がん幹細胞殺傷抗体の創出に挑戦することを最終目的とする。当該年度では、(1)クローン化がん幹細胞を新規に樹立し、その幹細胞特性を明らかにすること、そして、(2)gag遺伝子を発現させることで、膜タンパク質に富んだ出芽小胞を調製すること、を目標とした。具体的な成果としては、がん幹細胞クローニング用プラスミドベクターを完成させたこと、このベクターを使用して、がん幹細胞の特性を備えたクローン化がん幹細胞株を樹立できたこと、があげられる。クローン化の高効率化を目指し、独自のプラスミドベクターを完成させるまでに多大な時間を費やしたため、当年度では上記(1)のみを完遂することができた。(2)に関しては、現在、着手し始めたところである。 (意義、重要性等)がん幹細胞の存在が、がん治療後の再発や転移に大きく関わってくるため、がん幹細胞を標的とする治療法の開発は緊急の課題である。このような治療法を開発するためには、がん幹細胞の特性を解析しなければならない。しかし、がん幹細胞は不均一ながん細胞集団に非常に少ない割合でしか含まれていないため、効率良く単離できたとしてもその解析には困難を要する。それは、培養により純粋な細胞集団として増殖維持させることが極めて困難であるからである。我々は、当該年度により、上記問題を克服した技術をようやく完成することができた。この技術は、今まで不可能であった分子細胞生物学的解析をも、がん幹細胞で可能とする。例えば、大量のタンパク質やmRNAが、がん幹細胞から調製可能であることより、プロテオーム解析、遺伝子マイクロアレイ解析等にも利用可能となり、本技術の完成の意義は大きいと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度での挑戦的計画で最も時間を要し、且つ困難と考えられていた点は、クローン化がん幹細胞を新規に樹立するためのプラスミドベクター構築にあった。予想していた通り、染色体への安定的組み込み、持続的マーカー遺伝子の発現、プロモーターの再改変、等、何度も失敗を繰り返した。しかし、ようやく成果が実り、独自のプラスミドベクターを完成させ、本ベクターによるがん幹細胞の特性を備えたクローン化がん幹細胞株を樹立することができた。後のもう一つの目標(2)「gag遺伝子を発現させることで、膜タンパク質に富んだ出芽小胞を調製すること」は、Kitを用いた確立された方法であることより、時間を要しないと予想している。従って、進捗状況は良好であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1)クローン化がん細胞から出芽小胞を調製する: 上記の操作から選択したクローン化がん幹細胞から、膜たんぱく質に富んだ出芽小胞を、Invitrogen社のMembranePro機能性タンパク質発現システムを用いて調製する。具体的には、キット内のgag遺伝子発現ベクターを本細胞にトランスフェクションすることで、培養上製中に遊離してきた出芽小胞を沈殿操作により回収する。この時、クローン化がん幹細胞は、キット内のトランスフェクション試薬では遺伝子導入効率が低いため(予備的検討より確認積み)、幹細胞に有効なTAKARA社のX-fect試薬を用いる必要がある。2)出芽小胞をマウスに免疫して抗体産生B細胞を単離し、株化する: 出芽小胞をアジュバンドによりエマルジョン化し、マウスに免疫する。5回の免疫の後に、マウス脾臓から抗体産生B細胞を単離し、ミエローマ細胞と融合させることでハイブリドーマ化し、種々のクローンを得る。3)がん幹細胞特異的殺傷抗体のスクリーニングを行う: 各クローンの培養上清を回収し、PC3親株、クローン化がん幹細胞、正常ヒト前立腺上皮細胞、正常ヒト前立腺間質細胞の培養系にそれぞれ添加し、時間経過を追って、細胞傷害性を観察する。評価法は、a)肉眼による観察、b)3H-Thymidinの取り込みの評価(細胞増殖性)、c)LDHの漏出(細胞傷害性)、d)蛍光標識 Annexin Vとヘキスト染色(アポトーシス)、等を利用する。4)がん幹細胞特異的殺傷抗体の評価を行う: 選択した抗体群に関して、さらにその有効性を多種多様な培養がん細胞株を用いて検証していく。評価法は、上記3)と同様である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本計画を実行するため、細胞培養、分子細胞生物学的解析、および動物実験(免疫)を予定している。従って、これらの実験に必要な培養試薬・器具類(培地、血清、各種増殖因子、培養基材、プラスチック器具等)、分子細胞生物学的解析試薬(染色試薬、抗体、DNA・RNA・タンパク質抽出試薬、PCR関連試薬)、実験動物(マウス)の購入に消耗品費として使用させて頂く予定である。また、成果発表に関しては、論文出版(1編)と学会出張(国内と海外の各1回)に関わる経費として使用させて頂く予定である。
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