研究課題/領域番号 |
23650611
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大河内 信弘 筑波大学, 医学医療系, 教授 (40213673)
|
研究分担者 |
福永 潔 筑波大学, 医学医療系, 講師 (20361339)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | アンチセンスRNA / 肝癌 / バイオマーカー / スクリーニング |
研究概要 |
肝細胞癌(HCV陽性)15例の癌部、6例の非癌部よりRNAを抽出し、センス/アンチセンスRNAの解析が同時に可能なカスタムマイクロアレイを用い、アンチセンスRNAを含む癌関連遺伝子の解析を行った。センス/アンチセンスRNAの発現情報を解析することにより、癌部と非癌部において、発現に有意差(p<0.001,Fold-change>2.0)のあるアンチセンスRNA25遺伝子、センスRNA161遺伝子を同定した。これらのアンチセンスRNAに関して階層的クラスター解析を行ったところ、癌部と非癌部を明確に分類することが可能であった。主成分分析でも同様に癌部と非癌部を明確に区別することができた。また、癌部において、組織型による遺伝子発現に有意差のあるアンチセンスRNA43遺伝子、センスRNA71遺伝子を同定した.これらの遺伝子に関してクラスター解析を行い、組織型による層別化が可能であった。肝細胞癌における、内在性アンチセンスRNAの発現解析では癌部と非癌部の相違や、組織型の相違を反映する特徴的な発現パターンが存在することが明らかとなった。このことから、内在性アンチセンスRNAの発現プロファイル解析による腫瘍診断の可能性が示唆された.今後、肝癌におけるアンチセンスRNAの発癌への関与を明確にし、血中のセンス/アンチセンスRNAの発現解析による新しいハイスループットスクリーニング法の開発と、癌組織のRNA発現変化による新しい層別化法の開発に結び付けたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究実施計画通り、肝癌15症例の癌部と非癌部の組織中のセンス/アンチセンスRNAのカスタムマイクロアレイによる網羅的解析を行うことができた。その結果、癌特異的に発現が変化するセンス/アンチセンスRNAを同定し、さらに癌部において組織型毎にRNAの発現が異なることを確認できた。その結果は、INTERNATIONAL JOURNAL OF ONCOLOGY 40: 1813-1820, 2012で報告した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、肝癌患者および健常人の末梢血中のセンス/アンチセンスRNAのカスタムマイクロアレイによる網羅的解析を進め、血液検査による肝癌の新規スクリーニング法に用いる新規バイオマーカー候補となるセンス/アンチセンスRNAを30~50個に絞り込む。その候補RNAに関してsiRNAを作成し、ヒト肝癌細胞株HepG2、HuH7、Hep3BにおいてsiRNAを用いてknock downなどをした結果、各細胞株に表れる変化(細胞周期停止、アポトーシス誘導など)をフローサイトメトリー、caspase測定などを用いて評価し、機能解析を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1.末梢血中のセンス/アンチセンスRNAのカスタムマイクロアレイによる網羅的解析肝癌手術の患者(術前)及び健常人から末梢血を採取し、RNAを抽出する。抽出したRNAから組織と同様の手技を用い、癌患者に特異的に発現変化が見られるセンス/アンチセンスRNA検出を同定する。癌組織において発現変化の見られるセンス/アンチセンスRNAと、末梢血の解析で得られた結果とをプロファイリングし、血液検査による肝癌の新規バイオマーカー候補となるセンス/アンチセンスRNAを30~50個に絞り込む。2.候補センス/アンチセンスRNAの機能をヒト肝細胞癌株において確認候補RNAに関してsiRNAを作成し、ヒト肝癌細胞株HepG2、HuH7、Hep3BにおいてsiRNAを用いてknock downなどをした結果、各細胞株に表れる変化(細胞周期停止、アポトーシス誘導など)をフローサイトメトリー、caspase測定などを用いて評価し、機能解析を行う。3.低コストで迅速診断可能な新規癌スクリーニング診断用カスタムマイクロアレイ開発肝癌患者の癌組織および血液 RNA の解析で明らかになったセンス/アンチセンスRNAの発現プロファイルから肝癌スクリーニング診断に有用と思われる遺伝子を30~50個に厳選し、ハイスループット処理に対応できるようにより低コストなスクリーニング検査を実現する。
|