近年、ゲノム解析の発展に伴い、発がん過程におけるエピゲノム変化の重要性が示され、メチル化DNAとmicroRNA (miRNA) は新規がん診断技術のバイオマーカーとして注目されている。研究代表者は現在までにメチル化DNAを便から簡易に検出する技術の開発を行い、その結果、大腸がんだけでなく胃がんもスクリーニング可能であることを世界で初めて示した (Nagasaka T et al. J Natl Cancer Inst 2009)。また、miRNAも便から検出可能であることを示し、検出ツールとしての可能性も示している (Nagasaka T et al. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2010)。 まず、メチル化DNAをバイオマーカーに用い、便中メチル化DNA検出による膵癌患者スクリーニングの検討を行った結果、膵癌患者から得られた術前2日間にわたり採取された便検体を解析した結果、62.5%(5/8)にMethylation Score 2以上が認められた。61人の健常人でMethylation Score 2以上が認められたは6.5%(4/61)であった。なんらスクリーニングツールを持たない膵癌に対するスクリーニング技術としては非侵襲的であることも含めると優秀であると判断できる。 膵がんに特徴的なmiRNAマーカー群を同定し、まったく新しい原理による便からのmiRNA検出技術の確立に関する研究成果では、まず、miRNAマーカーであるが、組織特異的なmiRNA群の同定をmiRNAアレイを用いて選別を行った。検出技術の確立については現在も鋭意開発を行っている。
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