食道扁平上皮癌および隣接非癌部粘膜、健常者正常食道粘膜におけるジェネティック、エピジェネティックな異常、microRNA(miRNA)発現異常を解析した。 昨年度、MCA microarray(MCAM)法により同定に成功した新規のメチル化遺伝子候補の中から新たに複数の遺伝子に関して、パイロシーケンスやMSP法等を用いて詳細に解析したところ、食道扁平上皮癌細胞株においてメチル化と発現低下の相関を認め、また、脱メチル化剤処理による再発現を認めた。食道扁平上皮癌組織においても高頻度のメチル化を検出した。早期の粘膜内癌の段階ですでに高頻度にメチル化を認める遺伝子や進行癌になるにつれメチル化の頻度が増す遺伝子も認めた。それぞれの遺伝子メチル化と飲酒歴や喫煙歴、背景粘膜(まだら食道の有無)との関連はさまざまであった。 miRNA microarray法により網羅的にmiRNA発現変化を解析した結果、癌部のmiRNA発現異常が高頻度に認められた。また、隣接非癌部粘膜において既にmiRNA発現異常が認められた事から、背景粘膜におけるmiRNA発現異常が、食道扁平上皮癌の発症に深く関与している事が示唆された。発現異常を示したmiRNAの標的遺伝子候補も同定した。 以上のように、リアルタイム仮想分子生物学による食道癌の内視鏡分子イメージング診断法開発へ応用できる、有望な臨床用分子マーカーが同定できた。
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