研究概要 |
多発性骨髄腫は治癒を期待できる治療法がなく、治療の目標は患者の生活の質(QOL)を維持した長期生存となる。よって治療介入時期を決定する上でも的確なバイオマーカーが必要とされている。そこでHsp72 が骨髄腫特異的に発現するタンパク質と相互作用しているという着想に基づき、Hsp72 を標的とするアフィニティー精製を利用した疾患プロテオミクスによる腫瘍マーカーの探索を前年度から引き続いて行った。 まずNHq法にて患者血清中から単離したHsp72結合分子を同定した。これらのタンパク質が多発性骨髄腫由来であることを確かめるために、多発性骨髄腫細胞株(RPMI8226, KMS-12-PE)の培養上清を用いて同様にNHqによるアフィニティー精製を行い、Hsp72結合分子を質量分析により同定した。その結果、4つの分子が培養液中、血液中に共通して見出された。これらのタンパク質はmultifunction, development, organization, cell cycleといったGO termの分子であった。いずれも細胞外での機能や、分泌が知られていない分子である。そこでcell cycle関連分子に着目した。KMS-12-PE株を用いて細胞内、細胞外での本分子の発現解析を行った結果、本分子は細胞内でフラグメント化されていること、そのフラグメントが培養上清中でHSP72と結合していることが明らかとなった。全長のサイズの分子は培養上清中には存在しなかった。そこで、患者血清をNHq精製し、本抗体にてウエスタンブロットしたところ、患者血清9例中3例で本分子を認めた。健常者血清中には本分子は見いだせなかった。したがって、本分子は多発性骨髄の有力な腫瘍マーカーとなりうることが示唆された。
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