研究課題/領域番号 |
23650618
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研究機関 | 新潟薬科大学 |
研究代表者 |
梨本 正之 新潟薬科大学, 応用生物科学部, 教授 (30228069)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2012-03-31
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キーワード | 腫瘍マーカー / 血漿RNA / 多発性骨髄腫 / sgRNA / tRNase ZL / 血液がん |
研究概要 |
本研究の目的は、tRNase ZLのsgRNAとなる新たな細胞内および血漿中のRNAを探索し、そのRNAががん病態とどのような関係にあるかを解析することである。平成23年度に実施された具体的な研究内容は以下の通りである。 2種類のヒト正常細胞株(HEK293、IMR90)および8種類のヒトがん細胞株(HL60、RPMI-8226、KMM-1、Jurkat、Huh7、A549、HepG2、HeLa)からISOGEN法により全RNAを抽出した。それぞれのRNAサンプルに、3′アダプターとバーコード付き5′アダプターを連結させた後に、RT-PCRによりcDNAを作成、増幅させた。その後、それぞれのcDNAサンプルをアガロースゲル電気泳動法により分離し、5~35-ntのRNAに相当するcDNA画分をゲルから抽出し精製した。また、米国ALLCELLS社から購入した、3人の健常人および3人の多発性骨髄腫患者の血漿からISOGEN法によりRNAを抽出し、同様に、5~35-ntのRNAに相当するcDNAを調製した。更に、同社から購入した、3人の健常人および3人の多発性骨髄腫患者の末梢血単核細胞由来の全RNAに関しても、同様に、5~35-ntのRNAに相当するcDNAを調製した。これらのcDNAサンプルの塩基配列および存在頻度は、現在、(独)理化学研究所オミックス基盤研究領域にてIllumina社のシークエンサー(HiSeq 2000)を用いて解析中である。 この細胞内RNAの解析により、がん化機構の新たな側面が見えてくることが期待される。また、血漿RNAのあるものは、より感度の高い腫瘍マーカーとして、がんの早期発見に貢献するかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題の研究計画・方法の概要は次の通りである。「ヒト正常細胞株およびがん細胞株または新たに得られたがん患者由来のがん細胞を用いて、細胞内のtRNase ZLのsgRNAとなりうる新たなRNAを探索するために、Illumina社の sequencing法により網羅的に短いRNAの塩基配列決定を行う。得られたRNAの種類や発現量を解析し、がんの種類との関係やがん患者の予後との関係を分析する。また、これらの新規RNAがtRNase ZLのsgRNAとなりうるかどうかをin vitro RNA切断系を用いて解析する。同様の解析を、健常人とがん患者由来の血漿中のRNAに関して行う。」 本研究は当初平成23年度単年度内に遂行させる予定であったが、以下に示す理由により平成24年度に亘って研究を継続することとした。 当初の研究計画において、様々なヒト細胞由来のRNA配列を網羅的に分析するために、Illumina社の次世代高速シークエンサーを用いた解析を、タカラバイオ(株)ドラゴンジェノミクスセンターに依頼する予定であった。しかし、(株)ベリタスを介した米国ALLCELLS社からの多発性骨髄腫患者由来血中RNA試料および血漿試料の輸入が、両社の発注試料取り違えなどのため大幅に遅れ、さらに、タカラバイオ(株)での解析も、他からの解析依頼数の予期しない増加により、平成23年度内の解析結果納品が困難な状況になった。この状況を勘案し、より迅速な受託解析が可能な機関・企業を探したところ、理化学研究所オミックス基盤研究領域にて受託を行っていることがわかり、Illumina社のシークエンサー(HiSeq 2000)を用いた解析を依頼した。しかしながら、理化学研究所における解析でも、解析を完了し納品できるのは平成24年度に入ってからになるとの見通しであり、現在、解析データの納入を待っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画を遂行するために、平成24年度は、網羅的塩基配列決定法により得られるRNAの種類や発現量に関する情報を詳細に分析することを主な課題とする。また、この網羅的塩基配列決定により見出されると思われる新規RNAがtRNase ZLのsgRNAとなりうるかどうかをin vitro RNA切断系(Nucleic Acids Res., 2004, 32:4429)を用いて解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に(独)理化学研究所オミックス基盤研究領域に依頼したIllumina社のシークエンサー(HiSeq 2000)を用いた塩基配列の網羅的解析費用(5レーン分の解析)として、1,764,000円が支出される予定である。また、残りの120,646円は、in vitro RNA切断解析のための試薬購入費として支出される予定である。
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