研究課題/領域番号 |
23650621
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大内 憲明 東北大学, 大学病院, 教授 (90203710)
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研究分担者 |
権田 幸祐 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80375435)
甘利 正和 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50400312)
多田 寛 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50436127)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 癌 / バイオテクノロジー / 薬学 |
研究概要 |
GFP 結合EB1 発現ヒト乳癌KPL4細胞を作成し,共焦点レーザー顕微鏡および多光子励起レーザー走査型顕微鏡を用いて,in vitro およびin vivo において,微小管伸長端の詳細な動態観察を行なった.GFP 結合EB1 集積部の移動速度を微小管伸長速度とみなすことで,培養細胞の薬剤非投与条件で微小管伸長速度を平均330nm/s と計測した.微小管作用薬のパクリタキセルを投与後に,微小管の伸長を観察できる細胞(生細胞)と微小管の伸長を観察できない細胞(死細胞)を明確に区別することができ,さらに生細胞においてもパクリタキセル濃度が高くなるにつれて微小管伸長速度が低下し,パクリタキセル10nM では平均150nm/sまで低下がみられた.死細胞の数はパクリタキセル濃度依存的に多くなるが,20nM の高濃度条件で培養細胞がほぼ全滅状態の中においてもGFP 結合EB1 集積部が細胞質内で秩序よく動くのを観察できる細胞や,無秩序に細胞質を動きまわる細胞がみられた.これらの細胞を効率よく死滅させる条件を微小管伸長動態を観察しながらリアルタイムに検討することが可能となった.また,本研究におけるin vivo 分子イメージングは,マウスの心肺運動によるブレを最小限にするために頭蓋骨膜上に直径10mm,厚さ2mm の円盤状腫瘍を作製し,頑強なマウス頭部固定装置でマウス頭部の動きをゼロに抑えこむとともに,腫瘍組織の恒常性を維持しながら長期間観察を可能とする装置が必要であるが,そのような既製の装置が存在しなかったため,これを実現するマウス頭部固定装置を(株)成茂科学器械研究所の協力で開発した.以上のように,本研究の目的を遂行するための実験基盤を確立できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年3月に発生した東日本大震災により,本研究を行う実験施設および実験の遂行に必要な実験機器が甚大なる被害を受け,実験再開に半年ほどを要した.平成23年度の実験計画では各種癌細胞に遺伝子挿入を行うことで複数のEB1-GFP 発現細胞株を作成し,作用機序が異なる複数の抗がん剤を用いて,数多くの組み合わせによって基礎データを収集する予定であったが,実験環境上困難であったため,平成23年度はin vitro系を中心にGFP 結合EB1 発現ヒト乳癌KPL4細胞とパクリタキセルを用いた実験に専念した.これにより抗がん剤の濃度の違いによる微小管伸長速度変化を計測し,抗腫瘍効果と微小管伸長速度の詳細な相関性を評価し得た.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は,(1)微小管伸長動態を用いて腫瘍細胞活性を評価する方法を確立すること,(2)各種の癌腫に対するDDS 製剤の効果を(1)の評価系を用いて3 次元的かつ経時的に解析すること,(3)解析結果をふまえ本手法の妥当性の検証を行い,DDS 製剤の研究開発への応用を促進することである.上記理由により平成23年度に予定していた条件すべての検討は遅れているが,本研究の最終目的は新たな抗腫瘍効果評価法の確立であるため,平成24年度は実験条件を厳選し堅実なデータを収集することが重要であると考えられる.平成24年度は,平成23年度に得られたin vitroデータをもとに,癌細胞としてGFP 結合EB1 発現ヒト乳癌KPL4細胞,抗がん剤としてパクリタキセルおよびその他の微小管作用薬を用いたin vivo実験に集中し,データを解析していく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,in vivoイメージングに必要なヌードマウス購入費(計200,000円)および多光子顕微鏡使用料・実験試薬・機器購入費(計700,000円)に加えて,研究調査・成果発表旅費に計400,000円,研究結果の論文作成諸費用に計200,000円を計上した.
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