研究課題/領域番号 |
23650625
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
許 南浩 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70142023)
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研究分担者 |
阪口 政清 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70379840)
片岡 健 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (10293317)
村田 等 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (90579096)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | REIC/Dkk-3 / がん / 遺伝子治療 / アデノウイルス |
研究概要 |
(具体的内容)本研究の最終目的は、がん遺伝子治療における安全性と治療効果を両立した「新世代REICアデノウィルス」を作成することである。当該年度では、(1)遺伝子の発現効率を従前の10倍以上に引き上げる、(2)ミュータント型REIC/Dkk-3遺伝子による安全性の担保(REICには血管新生能があるという可能性が指摘されているため)、(3)アダプタータンパク質によるアデノウィルス感染効率の向上、(4)特異的プロモーターによるがん選択的遺伝子発現、を目標とした。具体的な成果としては、(1)新規プロモーターシステムの開発により従来のCMVやCAGプロモーターシステムと比較して遺伝子発現を10-100倍に引き上げることに成功した。(2)は、ミュータント化することにより、REICの発現性、安定性、機能等の消失が認められ、解決策がとれていない状況である。(3)に関しては、大きく前進し、感染を高効率化するためのアダプター開発に成功した。また、(4)では、(1)の新規プロモーターシステムを改変することから、がん特異的高効率遺伝子発現をも可能にした。 (意義、重要性等)我々は、REICをアデノウィルス (Ad-REIC) として使用した場合、がんの治療手段として非常に有望であることを見いだし、その臨床応用に向けた努力をしてきた。しかし、アデノウィルス特有の副作用の問題点も同時に懸念されてきた。このことから、 投与量を極度に減らしても同等の効果が得られるような新しいアデノウィルスベクターの開発が望まれた。この問題に際し、当該年度では、Ad-REICを大幅に改善することができた。これは、従来のものに比較して生体内投与量を極度に減らすことが可能と考えられ、治療効果を残したままで、副作用の大幅な改善に大きく貢献することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度での挑戦的計画では、研究実績の概要に記述しているように(1)~(4)の目標の内、一つ(2)のみを残し、全て成功している。特に独自に開発した新規プロモーターシステムと新規アデノウイルスアダプターにより、従来に比較して遥かに強力な選択的感染、且つ遺伝子発現を可能にした。従って、進捗状況は良好であると考える。 (2)に関しては、現在のところ、我々の長期に渡る詳細な検討結果よりREICによる血管新生は認められていないことから、ミュータント化する必要はないと結論づけている。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度でほぼ概ね完成した「新世代REICアデノウィルス」について、抗腫瘍効果をin Vitroとin Vivoの検討から正確に評価する。具体的には、種々多様な培養がん細胞株を用いて、新世代REICアデノウィルスのアポトーシス誘導能をウィルスの濃度、時間経過等を含めて詳細に検討する。また、動物実験に移行して、本効能を検討する。検討項目は、以下の通りである。1)担がんマウスを用いた治療効果の判定総合的な抗腫瘍性治療効果を判定するため、従来のREICアデノウィルスと「新世代REICアデノウィルス」を担がんマウスへ投与し、治療効果を比較する。2)腫瘍周囲血管への影響などの副作用を検討不必要な副作用が発生していないか、特に腫瘍周囲の血管新生が亢進していないかについて病理学的に検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本計画を実行するため、細胞培養、分子細胞生物学的解析、および動物実験(抗腫瘍性治療効果)を予定している。従って、これらの実験に必要な培養試薬・器具類(培地、血清、各種増殖因子、培養基材、プラスチック器具等)、分子細胞生物学的解析試薬(染色試薬、抗体、DNA・RNA・タンパク質抽出試薬、PCR関連試薬)、実験動物(マウス)の購入に消耗品費として使用させて頂く予定である。また、成果発表に関しては、論文出版(1編)と学会出張(国内と海外の各1回)に関わる経費として使用させて頂く予定である。
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