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2012 年度 実施状況報告書

腸管腫瘍におけるパイエル板の役割

研究課題

研究課題/領域番号 23650631
研究機関長崎国際大学

研究代表者

藤本 京子  長崎国際大学, 薬学部, 助教 (50435137)

キーワード大腸がん / パイエル板 / 食物繊維
研究概要

パイエル板数を増加させる効果のあるトウモロコシ外皮から抽出した水溶性アラビノキシラン(AXY)の摂取濃度を検討した結果、昨年度は、パイエル板の増加効果がよく見えないと報告したが、今年度も引き続き同内容の実験を繰り返し、マウスの匹数を増やして統計解析した結果、マウス一日の飼料摂取量あたり0.1%配合で腸管内のパイエル板数は有意に増加していることがわかった。そこで、24年度はコントロール群(0%)に加え0.1%、1%の3グループにおいて比較検討することにした。
AXYを摂食したApcMin/+マウス群は、濃度依存的にパイエル板数が増加していることがわかった。また、発生ポリープ数はコントロール群と比較して、どちらも有意に減少しており、1.5mm以上のサイズの腸管ポリープ数も有意に減少していた。このことからAXY摂取は、ポリープ発生やポリープサイズ増大を負に制御することが分かった。この現象が、AXYの効果なのか、パイエル板数増加が関係しているのかを明らかにするために、パイエル板が欠損しているApcMin/+マウス(Aly-/-ApcMin/+)を作成し、まずは、ApcMin/+とAly-/-ApcMin/+で腸管ポリープ数の比較を行った。すると、パイエル板が欠損しているAly-/-ApcMin/+マウスは、ApcMin/+に発生するポリープ数よりも有意に減少していることがわかった。
次に、血清中のサイトカインを野生型マウス、ApcMin/+コントロール群、AXYを摂取してパイエル板が増加したApcMin/+マウス群で比較検討した。野生型に比べ、ApcMin/+遺伝子型では、IL-5、IL-13、IL-15等が大幅に減少しており、AXY摂取群において増加する傾向が見られた。その他のサイトカインにも変化が見られたので、詳しく解析を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

パイエル板欠損マウスとApcMin/+マウスを掛け合わせ、両遺伝子に変異が入ったことを確認するプライマーやPCR条件を検討し、マウスの尾を用いてAly-/-ApcMin/+の遺伝子型を持つマウスを得ることに成功した。また、この遺伝子型を持つマウスの生存期間を調べるために必要な個体数を確保することができた。AXYを摂取させたApcMin/+マウスにおいては、血清中のサイトカインや盲腸内容物の存在する腸内微生物叢の動向をReal time RCRにて観測したが、パイエル板の増加との関連性は未だ見いだせていない。
ポリープ数減少効果が、AXYの効果なのかパイエル板が増加したことが関係しているのかを明らかにするために、Aly-/-ApcMin/+マウスにもAXYを摂取させる実験を行うつもりだが、必要匹数の確保が未達成である。

今後の研究の推進方策

昨年度に引き続き、AXY摂食によるポリープ抑制のメカニズムを探る。また、ポリープ減少が、パイエル板増加によるものなのかを明らかにするために、パイエル板欠損マウスAly-/-ApcMin/+にAXYを摂食させる実験も匹数が揃い次第、早急に始める予定である。また、AXY自体に毒性が無いことを証明するために野生型WTにも同様に摂食させることを試みる。摂取期間後、それぞれの腸管を採取し、形態学的解析や免疫染色を行い、転写因子の核内移行の様子を探る予定である。また、それぞれのマウスにおいて解剖時に心採血を行い、24年度に変化が大きいと見出された血清中サイトカインIL-5,IL-9,TNFαなどを重点的に解析していくつもりである。
AXYを摂取したAly-/-ApcMin/+において、ポリープ数に変化が見られなければ、ApcMin/+マウスにおいてポリープ数が有意に減少したのは、パイエル板数増加が関わっている可能性が示唆され、ポリープ数に変化が見られれば、パイエル板を介さないAXYの効果が腸管ポリープに影響を及ぼしたと考えられ、ポリープ抑制機序を追求する。

次年度の研究費の使用計画

25年度は、引き続きマウス飼育維持費を計上する。また、遺伝子型を調べるためのタイピング試薬、腸管組織の免疫染色を行うための抗体購入費などにあてる。血清中サイトカインを測定するためのELISAkitも購入予定である。その他、研究成果発表を行う費用としても計上する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] Suppression of intestinal polyp development in ApcMin/+ mice via inhibition of P-glycoprotein using verapamil2013

    • 著者名/発表者名
      K. Fujimoto, G. Fujii, M. Mutoh, M. Yasunaga, H. Tanaka, M. Wada
    • 雑誌名

      European Journal of Cancer Prevention

      巻: 22 ページ: 8-10

    • DOI

      10.1097

    • 査読あり
  • [学会発表] 自分のヒト皮膚常在菌を活用した新しいスキンケア法の開発2013

    • 著者名/発表者名
      野嶽勇一、松本菜季、三浦良子、藤本京子、林田友紀、深澤昌史、本田英俊、榊原隆三
    • 学会等名
      日本農芸化学会2013年度大会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      20130324-20130328
  • [学会発表] 豆乳の乳酸菌発酵物PS-B1摂取によるアレルギー抑制効果―皮膚炎アレルギーモデルを用いて-2013

    • 著者名/発表者名
      三浦良子、深澤昌史、照屋雄一、藤本京子、川久保美穂、野嶽勇一、榊原隆三
    • 学会等名
      日本農芸化学会2013年度大会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      20130324-20130328
  • [学会発表] ApcMin/+マウスの腸管腫瘍形成におけるABCB1膜輸送タンパク質の役割2012

    • 著者名/発表者名
      藤本京子、田中宏光、安田香央里、田代康介、久原哲、和田守正
    • 学会等名
      第85回日本生化学会大会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      20121214-20121216
  • [学会発表] トウモロコシ繊維によるApcMin/+マウスにおける腸ポリープ数の減少2012

    • 著者名/発表者名
      藤本京子、櫻井瞳、波多江日名子、吉留弘子、木本裕、小川浩一、藤井元、武藤倫弘、和田守正
    • 学会等名
      第35回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      20121211-20121214
  • [学会発表] ApcMin/+マウスの腫瘍サイズ決定に関与する遺伝子の同定2012

    • 著者名/発表者名
      橋山愛理、藤本京子、池田公平、田中宏光、安田香央里、田代康介、久原哲、田口健一、和田守正
    • 学会等名
      第29回日本薬学会九州支部大会
    • 発表場所
      熊本
    • 年月日
      20121208-20121209
  • [学会発表] ApcMin/+マウスにおけるトウモロコシ繊維の腸ポリープ数減少効果2012

    • 著者名/発表者名
      吉留弘子、藤本京子、櫻井瞳、波多江日成子、木本裕、小川浩一、藤井元、武藤倫弘、和田守正
    • 学会等名
      第29回日本薬学会九州支部大会
    • 発表場所
      熊本
    • 年月日
      20121208-20121209
  • [学会発表] ApcMin/+マウスの腫瘍サイズ決定に関与する遺伝子の同定2012

    • 著者名/発表者名
      和田守正、藤本京子、田口健一、安田香央里、田代康介、久原哲
    • 学会等名
      日本がん分子標的治療学会
    • 発表場所
      北九州
    • 年月日
      20120627-20120629

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公開日: 2014-07-24  

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