研究課題/領域番号 |
23651001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西岡 純 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (90371533)
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研究分担者 |
的場 澄人 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (30391163)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 海氷 / 微量金属元素 / クリーン分析技術 |
研究概要 |
本研究では、海氷によって移送される可能性が高く植物プランクトン増殖へのインパクトの大きい微量栄養物質である「鉄」と陸起源の鉱物などの指標となる「アルミ」に着目した海氷内の微量金属元素の無汚染分析方法を開発することを目的としている。H23年度は、計画されている(1)表面研磨による海氷サンプルクリーニング装置、(2)クリーン海氷融解インライン分析装置、の2つの装置の開発のうち、(2)の装置について研究を進めた。 先ず、海氷をクリーンに融解してサンプルを得るための融解装置のヘッド部分の開発を実施した。融解装置のヘッドを当初熱伝導のよい銅とチタンを用いて作成したが、サンプル融解時の金属元素の汚染を避ける事が出来なかった。そのため溶解ヘッド部分をテフロンに変え、加熱したエアーによって海氷を融解させる装置を組み上げた。この装置をテストしたところ、海氷内の微量金属元素を汚染なく分析できる性能を有している事を確認できた。 次に海氷内の微量元素を分析するための分析計を構築した。ターゲットとして、海氷内に存在する還元的な環境や光化学反応などによって生成される二価鉄の分析を試みた。この二価鉄分析を感度良く少量のサンプルで実施するために、ルミノール化学発光法を応用してインラインの分析計を組み上げた。この装置を、2012年2月に南部オホーツク海氷域で行われた観測航海に持ち込み、現場海域の二価鉄濃度の測定を実施した。その結果、融氷水や融氷水の影響を受けていた表層海水で周囲より有意に高い濃度で二価鉄を検出する事ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた(1)表面研磨による海氷サンプルクリーニング装置、(2)クリーン海氷融解インライン分析装置、の2つの装置の開発のうち、(2)のクリーンサンプル融解装置および分析計部分の作成を実施し、それぞれ実用出来る目途が付いたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後、H23年度に作成した「クリーンサンプル融解装置」および「微量分析装置」を組み合わせ、海氷内の微量元素の分析装置として完成させる。H23年度に検討していない他元素(三価鉄およびアルミニウム)の分析の検討も行う。またH23年度には検討出来なかった「表面研磨による海氷サンプルクリーニング装置」の開発も行う。さらに実際にこれまで得てきたサンプルを分析し、海氷内の微量元素の分布を調べる。なお、「クリーンサンプル融解装置」の開発に時間を要したため、「表面研磨による海氷サンプルクリーニング装置」の検討ができず、H23年度未使用額が発生した。未使用額は、H24年度に本件を検討するために使用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H23年度には検討出来なかった「表面研磨による海氷サンプルクリーニング装置」の開発の為に研究費を使用する。また、「海氷内の微量金属元素分析装置の開発」、や「海氷内の微量金属元素の分布」において成果をあげ、その成果の発表(論文・学会)に関わる費用に研究費を当てる。
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