研究概要 |
本研究は、申請者自身が開発した4,500m水深まで採水機としての使用が可能な採水機(Rotaly Clean SeaWater Sampler)の時系列採水機能と、本申請で新たに開発・改良を行う海洋中層で使用可能な新型微生物培養装置を用い、海洋有光層下(水深200~2,000m)水中に生息する微生物群集の増殖速度や増殖特性について、現場培養から定量評価することを目的に実施した。 H25年度は、H24年度に判明した不具合(逆止弁)について、各メーカーの様々な逆止弁を再度確認し最終的にテフロンタイプの逆止弁を用いることを決定した。 H25年9月30日、10月1日の2日間、静岡県焼津市沖駿河湾中央部において漁船を利用した現場水深微生物培養実験(水深400m)、対象となる同水深海水試料を用いた船上培養実験を含む海洋調査を実施した。H24年度同様、漁船の状況に応じた調査計画および装置を使用することで本申請で目的としている微生物現場培養実験や船上での微生物培養実験が実施可能であること、漁船などの小型船舶を用いた短期間の海洋調査時の作業効率化に関する目途が立った。 船上培養法及び現場培養法で得た試料について、CARD-FISH法およびDAPI染色による二重染色を行ったのち海洋微生物群集、真正細菌群集、クレンアーキオータ群集の培養時間毎の細胞密度を求め、その数値から各群集の増殖速度(μ)を算出した。その結果、船上培養法により得られたμが現場培養法により得られた比増殖速度を全ての群集で上回っていることが判明した。この結果は、船上培養法が海洋微生物群集の代謝を活性化させる可能性を示しており、その原因として船上培養の際に生じる圧力変化により海洋微生物群集の代謝が活性化されていることが考えられる。
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