研究課題/領域番号 |
23651005
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
王 青躍 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (30344956)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 大気エアロゾル / 花粉 / アレルゲン / 水溶性有機炭素成分 / 微小粒子 |
研究概要 |
本研究では、微量花粉アレルゲン含有微小粒子を含む大気バイオエアロゾルの化学的性状と濃度変化を特異的に測定するための新しい環境計測ツール構築を目指している。特に、表面プラズモン法(以下SPR法)を用いて生体分子と大気バイオエアロゾル中の標的活性分子の特異的相互作用、速度論的相互作用を解析し、高速・高感度の計測技術として確立しようとしている。花粉アレルゲン等の汚染動態把握のための高感度の新しい環境計測ツールを構築することができれば、その濃度計測に加え、アレルギー性などの健康影響指数を把握することも目標としている。例えば、都市部大気汚染物質によるスギ花粉アレルゲンの微小粒径への移行機構を解明するため、埼玉県都市部の大気浮遊粒子状物質を捕集してスギ花粉アレルゲンCry j 1の粒径別測定を行った。LPIで捕集したフィルタはカッターを用いて1/4にカットし、HBS-EPバッファーを2 mlの入った試験管内に入れ、4℃で3時間静置後、さらに室温で1時間振とう器で振とうさせた後、溶液を10分間遠心分離し、その上清を70 L分取し、SPR法としてBiacore Jシステムのフローセル内に流してCry j 1濃度の測定を行った。また、スギ花粉飛散期において、スギ花粉アレルゲンの微小粒子化は降雨後の晴れ日にその影響が高くなることから、降雨を採取し、その降雨の特徴と降雨中のスギ花粉存在量を調査し、形態観察を行った。0.06 m以下の粒径範囲にはCry j 1が検出されなかったが、3.5ミクロン以上の粒径範囲に高濃度のCry j 1が測定された。また、0.06~2.1ミクロン範囲のアレルゲンが観測されたため、都市部には微小粒径にスギ花粉アレルゲンCry j 1が存在していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フィールド調査とともに、粒径別のバイオエアロゾルの捕集・分析法を行い、その化学成分や存在形態が人為的・自然起源のとの関連性を調査し、一次発生、二次生成、人為的・自然起源のバイオエアロゾル中の標的活性分子の化学的性状と濃度変化をSPR法によって特異的に検出技術を開発し、アレルゲンを含むバイオエアロゾルの動態を把握することができた。特に、23-1 大気バイオエアロゾル構成活性分子の化学的性状を調査し、23-2 フィールド試料からの大気エアロゾル中の花粉アレルゲン系の生体分子の高効率・高速抽出法を確立した。また23-3 従来計測法による種々の大気バイオエアロゾル中の標的活性分子の分類(文献調査)とデータを蓄積している。さらに、バイオエアロゾル中の標的成分(アレルゲン)の化学的性状を確認するために、フィールド調査によって解明しつつある。23-4 代表的キャプチヤー生体分子のシングルSPR計測システムを構築した。特にタンパク質・花粉アレルゲン系:センサーチップの特性(結合→平衡→解離→再生→結合)を検討した。
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今後の研究の推進方策 |
24-1 大気花粉などのバイオエアロゾル活性分子の化学的性状の継続調査24-2 初冬~夏季に出現する高濃度大気汚染時の各種標的活性分子の排出挙動・変動調査への適用検討24-3 日本特有のアレルゲン・共通抗原を含むエアロゾル中の総有機炭素成分(TOC計)の測定による水溶性有機炭素成分(WSOC)の寄与率推定値と比較し、並びにそのエアロゾルへの影響を評価する。24-4代表的キャプチヤー花粉アレルゲン系生体分子の固定化方法を活用した汎用性・特異性SPR法用センサーチップの測定安定化の改良 人体呼吸器系に汚染化学種(化学的変性によるアレルギー症状悪化)を計測・評価するため、酵素免疫測定法(ELISA法)、電気泳動用蛍光ゲルピッカーを用いて、指標抗原の特異的計測センサーチップの適用手法を試み、抗原活性の変化から、化学的変性、複合有害バイオエアロゾルの排出挙動評価への応用も検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費類(標準試料、分析用品・薬品、分析カラム、フィルタ等、センサーチップ部品また、研究成果投稿料(エアロゾル学会誌、Atmos. Environ.などの国際誌への投稿計画)など充てる予定。
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