2011年3月に起きた、福島第一原子力発電所事故により、ヨウ素129を含む放射性核種が環境中に漏出した。この影響により、河川水・地下水等への事故起源のヨウ素129が混入したことが考えられる。本年度は、原発事故サイト周辺の河川水中のヨウ素129とヨウ素127を測定し、河川水および地下水が、どのようなソースタームのミキシングとなっているかを検討した。すなわち、事故起源ヨウ素129の河川水・地下水への混入経路を明らかにすることを目的とした。このことは、天然の温泉水の、現代の雨水の混入を評価するための貴重なデータとなるはずである。昨年度までに生じた問題点として、ヨウ素同位体比から決定した年代と地質学的に決定した年代がずれるという問題があったが、その解釈として、天然同位体比の平衡初成値を再検討する場合、これまで純粋に天然試料と考えられていた地下水(温泉水)が人為起源のヨウ素129の汚染を受けていたことになる。そこで、これまでのデータを再解釈するため、雨水と河川水(地下水)の今後メカニズムの知見が必要になる。このような目的で、本研究では、本年度は事故起源放射性物質の影響の強い、福島県相馬郡飯館村、南相馬市、影響の比較的弱い、阿武隈地方の河川水や湖沼水試料の測定を行った。その結果、これらの環境水中のヨウ素129およびヨウ素127は、多くの試料が事故により極めて汚染された雨水と天然の地下水との間の混合により説明できることが分かった。また、一部の試料はこれらの混合ラインからずれた位置にあるが、これらは、河川水中への土壌の溶解で説明できることが分かった。これらの知見を適用すると、これまで測定した温泉水を始めとする地下流体中のヨウ素129およびヨウ素127は、オリジナルの天然ソースと現代の雨水との混合で解釈できることが分かった。
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