研究課題/領域番号 |
23651009
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
伊藤 公紀 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 教授 (40114376)
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研究分担者 |
田中 博 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (70236628)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 太陽風 / aa指数 / 地表気温 / 対流圏気温 / 成層圏気温 / 北極振動 / QBO |
研究概要 |
太陽活動変動の気候影響は、事実確認の段階から機構究明の段階に入りつつあるが、大きなブレークスルーは依然必要である。そこで本研究では、申請者が最近見出した地磁気擾乱指数(aa指数、太陽磁気活動の地球影響指標)と地表気温および北極振動との相関を新たな手がかりとして、太陽磁気活動-気候相関のミッシングリンクに迫ることを目指している。 2011年度は、気温データと太陽風パラメータとの相関を検討した。太陽風パラメータとしては、aa指数及びラグランジュ点で測定される太陽風データを用いた。太陽風データの中から特に、太陽風から地球磁気圏に取り込まれるエネルギー流束Paを計算して用いた。気温データとしては、地表気温のステーションデータおよびグリッドデータ、また衛星測定による対流圏気温と成層圏気温を用いた。また、北極振動及びQBO(赤道域成層圏準2年振動)を考慮した。 大気各層の気温と各太陽風パラメータの相関を、月毎値に基づいて1960-2010年の期間について求めたところ、各年をQBOの位相(風向き)で層化した際に顕著な相関が見られた。例えば、赤道域の広い範囲で、1月の成層圏気温と1月のPaは、QBO西風相において高い相関係数(0.7-0.9)を示した。対流圏では、例えば3月の気温と3月のPaの間に、QBO東風相で赤道域付近で高い逆相関、北半球中緯度~高緯度にかけて高い相関が見られた。当然ながら、地表気温の挙動は対流圏に近い。地表気温について観測されていた北欧地域におけるaa指数との高い相関が確かめられた。 北極振動については、aa指数及びPaとの相関が冬季に大きかった。 これらの結果は、太陽-電離圏相互作用(「宇宙天気」)と、太陽-成層圏・対流圏相互作用(「宇宙気候」と「宇宙気象」)のつながりの現象的な実態を明らかにする手がかりとなるものであろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
地表および対流圏・成層圏の気温データと太陽風パラメータの相関の検討が2011年度の主な計画であったので、順調に進んでいると判断できる。また、QBO位相による層化が大きな影響を及ぼすことの発見は、現象の機構解明に大きく寄与するもので、予定以上の結果である。北極振動の理論的取扱いにおいては、従来の順圧大気モデルを傾圧大気への拡張を行った。これにより、太陽風シグナルが成層圏から対流圏に下降する機構を考察する基盤の整備を行い、順調に進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
成層圏から地表に至るまで、太陽風の影響が観察されたので、今後はその詳しい伝播経路や機構を追求する。特に、QBO位相が気温-太陽風相関に大きく影響することが観測されたことから、電離圏と下層大気との間の波動伝播が重要であると考えている。QBO位相により、プラネタリー波の伝播影響を受けることが知られているからである。 できるだけ広い領域について、高層大気まで含めた大気の立体的情報を得て、波動伝播のダイナミクスを探る計画である。高層ロケットデータが少ないのは難点だが、最近になってデータが集まりつつあるので、利用できると考えられる。 太陽風と気象の相互作用については、これまで種々の定性的提案があるので、それらの提案を考慮しつつ、可能な限り、電離圏から対流圏までを含めたモデルを構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主としてパーソナルコンピューターおよびソフト、また旅費および謝金として使用する予定である。
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