湖沼堆積物には過去の気候変動が記録されている。しかし、湖沼堆積物から得られる気候変動の記録は複数の環境因子の影響を受け、その定量的な解釈は容易でない。本研究では、湖沼堆積物に含まれる珪藻殻の酸素同位体比が湖水の酸素同位体比と湖水温の影響を受け、一方、水棲植物のセルロースの酸素同位体比が湖水の酸素同位体だけの影響を受ける点に着目し、両データを比較することで、過去の湖水温を定量的に推定する「同位体温度計」の開発を研究目的とした。中国東北部の火山湖と琵琶湖の表層堆積物の珪藻殻の酸素同位体比とセルロースの酸素同位体比分析を実施した。両地域の推定気温と同位体温度計で得られた温度差はほぼ等しく、湖沼堆積物の同位体温度計の有効性を部分的であるが検証できた。
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