平成24年度までに構築したFAIMS/MS測定システムを用いて、大気電離によって生成するクラスターイオンの分析実験を行った。クラスターイオンとしては高純度空気に水蒸気、CO2、NO2などを添加し、放電または放射線の電離によって生成させたH3O+(H2O)n、O2-(H2O)n、O3-(H2O)n、CO3-(H2O)n、CO4-(H2O)n、NO2-(H2O)n、NO3-(H2O)n、などの正・負イオンを利用した。FAIMSを用いた場合、イオン源から質量分析計に入ってくるイオン量が大幅に減少し、分析可能なイオン種が限られることとなった。そのため、FAIMSを通過するイオン量を増加させるためのシステム構成、イオン源の選択等の検討を行った。イオン源としては放射線源、コロナ放電等を比較した結果、直流コロナ放電式イオン源が比較的良好であることがわかった。さらに大気微粒子のFAIMSによる分離可能性を調べるために、高純度空気にH2O、SO2、NH3を加えた反応空気をコロナ放電式イオン源で電離してできるイオン組成の分析を行った。正イオンではNH4+(H2O)n、負イオンではNO3-(H2O)n、NO3-(HNO3)m(H2O)n、SO5-などのクラスターイオンが生成することを確認した。これらのイオンに対してFAIMSを用いて分離可能な分散電圧および補償電圧の探索を行ったが、これまでのところ最適な電圧を見出すには至らなかった。
|