研究課題/領域番号 |
23651031
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
吉田 康一 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 研究部門長 (90358333)
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研究分担者 |
七里 元督 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 研究員 (20434780)
宮崎 歴 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (70358125)
冨田 辰之介 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 研究員 (60415718)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 酸化ストレス / サーカディアンリズム / 行動リズム / 摂食 / 体内時計 / 酸化脂質 / ヒドロキシリノール酸 |
研究概要 |
リズム障害と酸化ストレスとの関係を評価するためには、ベースラインとなる酸化ストレスの日内リズムをまず知る事が必要であった。しかし、これまで血液中の酸化ストレスマーカーのヒドロキシリノール酸(HODE)を経時的に24時間測定した事がなかったので、平成23年度はマウスを用いてHODEの一日の時間的変化を調べた。その結果、血液中HODEは明期に低く、暗期に高い明瞭な日内リズムを示す事が明らかとなった。異なる酸化ストレスマーカー7β-OHChも同様の応答性をした。これらの変動はそれぞれの酸化反応の基質となるリノール酸やコレステロールなどの濃度に日内リズムがないにもかかわらず、大きく変化する事から、生体内の酸化ストレス状態の変化を的確に捉えていると考えられる。これらの日内リズムの変化は、体内時計遺伝子クロックのミュータントマウスにおいても観察される事から、体内時計遺伝子とは独立したメカニズムのもとで酸化ストレスリズムが形成されている事がわかった。さらに、酸化ストレスに大きく影響すると予想される摂食行動との関係を調べるために、明期6時間もしくは暗期6時間の給餌時間制限を行って血液中HODEの濃度変化を見たところ、暗期給餌では自由給餌と類似した日内変動パターンを示す一方、明期給餌では明期にHODEが高くなり、暗期に低くなる反転のパターンを示した。つまり、摂食行動による酸化ストレスリズムが認められる事を示唆しており、行動リズムを反映した時計遺伝子と異なる新規のバイオマーカーとしてのHODEの利用に関して特許出願を行った(特願2012-067165)。24年度には睡眠障害モデルマウスにおける酸化ストレスマーカーの継時的変動を解析し、給餌性で見られた酸化ストレスの日内リズムに対して、ストレス性睡眠障害が及ぼす影響を解析する事としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度初めには震災と節電の影響で動物実験を中心とした研究実施ができない可能性もあったが、予想以上に興味深いデータを初めの時点で得る事が出来た。これまで日内行動リズムに連動した血液中酸化脂質を指標とした酸化ストレスリズムの存在を明確にし、それらのデータを下に知財化まで達成することができ、予定していなかった特許出願が年度内に終了したことから順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果は、5月に学会発表、平成24年度の間に論文発表を行う。また、さらに既に出願した特許に対しての追加データを加えながら、知財の強化にもとりくむ。さらに睡眠障害モデルマウスの血液中での酸化ストレスの変化を解析するとともに、ストレスの及ぼす酸化リズムへの影響や細胞レベルでの酸化リズムの解析を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
大型の備品購入の予定はない。培養細胞関係試薬、遺伝子発現解析試薬、動物実験試薬、酸化脂質分析用試薬等の試薬消耗品を中心に使用する事を予定している。
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