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2012 年度 実施状況報告書

日本の沿岸漁業制度の現状と将来:IADフレームワークによる制度分析

研究課題

研究課題/領域番号 23651033
研究機関福島大学

研究代表者

阿部 高樹  福島大学, 経済経営学類, 教授 (40231956)

キーワード沿岸漁業制度 / IADフレームワーク
研究概要

本研究は、日本の沿岸漁業制度の現状と将来的あり方を、E.オストロム氏らが展開してきたIADフレームワーク(Institutional Analysis and Development Framework)を適用して検討することにある。コモンズ研究の観点からは、沿岸漁業管理について①公的管理;②権利付与の市場管理;③共同体管理の3つの原型的システムが存在するが、これまで「共同体管理」の成功例として注目されてきた日本の沿岸漁業制度も、地域により衰退が加速している状況にある。また、本研究開始直前に発生した東日本大震災によって壊滅的な打撃を受け、復興・再生のあり方は沿岸漁業の喫緊の課題となっている。水産業復興特区(漁業権民間開放)や6次産業化などの議論も視野に入れる必要がある。
以上から本研究は以下の内容構成をとっている;①伝統的な日本の沿岸漁業制度とその機能の把握(制度分析・実態把握);②日本の沿岸漁業制度のIADアプローチによる評価;③震災による沿岸漁業の被害および復興論議;④沿岸漁業をめぐる新しい動き(漁業権民間開放、個別割当(IQ)、6次産業化など)。
平成23年度においては①③に力点を置いて研究をすすめ、②について準備的作業を開始した。その上で平成24年度においては、②を継続するとともに、③の継続的な把握、さらには、④に関する調査を開始した。
平成24年度の実績をより具体的に述べると、まず、研究協力者のDr. Ashutosh Sarkerに2名の研究者も加えて作成中のIADアプローチによる論文の完成度を高めた。次に、漁業復興関係の研究会等に参加して、沿岸漁業の将来的あり方に関する知見の獲得に努め、論文作成の準備としている。沿岸漁業の新しい動きとして、水産流通面も含めた調査、および、新潟県佐渡ではじまった、アカエビの個別割当(IQ)制度の調査を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

順調に進み評価できるのは、IADアプローチによる日本の沿岸漁業に関する論文「Pro-User-Self-Governance State and Design Principles for Coastal Fisheries Commons in Japan」の完成の目処がついた点である。さらに、沿岸漁業の新しい動きである、個別割当(IQ)制度の調査が順調に進み、将来的あり方を検討する際の基礎情報を蓄積することができたことも挙げられる。
一方、沿岸漁業の将来を考える際には、東日本大震災からの復興論議との関係も無視できない要素であるが、この点についての研究情報の収集は不十分であり、大きな課題として挙げられる。時間を追って新しい動きが起こり、整理が難しいこともあるが、沿岸漁業を対象とする本研究においては重要な位置を占める点である。最終年度の宿題となる。
次に、IADアプローチそれ自体の研究について、より本格的な吟味が必要であったということも課題である。我が国において、IADアプローチの応用研究はいくつか存在するが、方法論それ自体を包括的に整理した文献は見当たらない。沿岸漁業以外のコモンズにも目を向けつつ、IADアプローチの有用性についての研究を並行して進める意義を強く感じているところである。
また、昨年度は論文を公刊するなど一部研究成果を公表することができたが、今年度は、論文刊行や学会・セミナー報告といった成果公表の面では、不十分な結果であった。
以上より、全体としては、「やや遅れている」という評価になる。

今後の研究の推進方策

改めて本研究の内容構成を確認すると、①伝統的な日本の沿岸漁業制度とその機能(制度分析・実態把握);②日本の沿岸漁業制度のIADアプローチによる評価;③震災による沿岸漁業の被害および復興論議;④沿岸漁業をめぐる新しい動き(漁業権民間開放、個別割当(IQ)、6次産業化など)、となるが、まず第一に、①②の観点から執筆を進めている論文を完成させることが最大の目標となる。これについては、研究協力者のDr. Ashutosh Sarker(モナッシュ大学、マレーシア)、その他2名の研究者との研究交流を円滑に深めていくことが重要と考えている。
第二に、③④に関わり沿岸漁業の将来的あり方を考察する上で、震災からの復興に関連して起こった漁業権をめぐる議論(水産業復興特区など)や生産組合等による6次産業化の動きは、避けて通れない論点である。福島についてはさらに、放射能問題の克服という点も関わってくることになる。これら、沿岸漁業の将来的あり方を分析するための情報がいまだ不十分であり、調査等を着実に実施していく必要がある。
論文刊行、研究会・学会での発表などの機会を利用して、研究成果の公表を図ることにも、積極的に取り組むものとする。

次年度の研究費の使用計画

次年度研究費予算約701千円については、以下の①~④のような執行計画を立てている。
①旅費(350千円):東北地方(福島~青森)の漁業地区で4回程度、その他の漁業地域で1か所(新潟あるいは関西)の実地調査を計画している。また、IADフレームワークの研究は、入会地や灌漑システムの分野で蓄積があり、先行研究の確認等のための調査も考えている。以上、実地調査に関わる旅費として150千円を予定する。漁業に関する研究会・学会への参加(4件程度)としては、150千円を予定する。漁業経済関連の学会、漁業復興に関するシンポジウムへの参加や、学会報告にも取り組む。研究協力者の日本滞在時に行う研究打ち合わせ、研究交流を図っている研究所研究員との打ち合わせにも50千円を予定する。
②物品(150千円):物品費関連として、研究図書資料(漁業経済関連、IADフレームワーク)の追加購入費等で800千円、その他、消耗品(インクカートリッジ、論文作成ソフト等)で700千円を予定している。
③謝金(110千円):研究資料の整理に関わる謝金として50千円を予定する。漁業関係者・研究者を招聘し専門的知識の提供を受けるために60千円予定する。
④予備費(100千円):予備費100千円を計上しておく。なお、研究協力者(マレーシア)との打ち合わせに関して、調整によってこちらが訪問する必要が生じた場合は、これをその際の原資とする。

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公開日: 2014-07-24  

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