研究課題/領域番号 |
23651035
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
櫻井 次郎 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (40362222)
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キーワード | 中国 / 環境 / 訴訟 / 環境法 / 被害者救済 / 公益 |
研究概要 |
2012年4月から5月にかけて、前年度に整理した先行研究をもとに、環境公益訴訟及び環境保護法廷に関するヒアリング調査目録を作成した。 2012年6月には北京で開かれた第2回環境司法論壇を傍聴し、同会議に参加した「環境保護法廷」所属の裁判官5名に対して、管轄区域内における環境公益訴訟の係争状況についてヒアリング調査を実施した。このヒアリング調査において、上記の調査目録を使用した。 2012年8月にはアムステルダム大学のBenjamin van Rooij教授が北京で主催した環境法の執行上の問題に関する研究会に参加し、欧米における環境法・政策専門家と環境法の執行および司法の問題について意見交換した。北京での研究会の後、雲南省曲靖市で係争中の環境公益訴訟の現地で被害者及び原告代理人に対するヒアリング調査を実施した。 2012年9月には改正されたばかりの民事訴訟法における環境公益訴訟にかかわる条文について、北京大学で民事訴訟法および環境法を専門とする研究者および実際に環境公益訴訟の代理を務めた経験のある弁護士を報告者として招いた研究会を開き、環境公益訴訟の手続き上の法整備状況とこれまでの実践について基調報告に基づいて議論した。 2013年2月には龍谷大学にて開かれた環境公益訴訟および環境保護法廷に関する研究会に司会者として参加した。同研究会では、環境公益訴訟を専門とする研究者が日中双方から招かれ、環境公益訴訟の国際的な動向に関する基調講演をもとに、日本及び中国における今後の環境公益訴訟の展望及び課題について議論された。 2012年度末には、次年度に実施する環境保護法廷への訪問及びヒアリング調査のための問い合わせ等、現地調査の準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
元々の計画では2012年度に研究対象としている環境公益訴訟事件の判決が出ていると見込んでいたが、実際には裁判所における審理(調停)が長引き、まだ一審すら未決であるため、この事例に関する最終的な評価と分析ができていない。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度としての取りまとめを行い、これを国際学会で報告し、論文を国内および海外の学術誌に投稿する。とりまとめの際には、これまでに行った調査に追加して、無錫市および貴陽市に設置された環境保護法廷の訪問調査を行う予定で、この調整は現在進められている。また、6月には国際コモンズ学会において中国の環境公益訴訟と地域社会に関する研究発表がすでにアクセプトされている。この学会報告の後、すでに暫定的に書き上げている論文を完成させ、海外の学術誌に投稿する。また、環境保護法廷における被害者救済プロセスに関する研究結果は、日本国内の研究会で報告したうえで、国内の学術誌に投稿を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
6月に開かれる国際コモンズ学会には、発表者として山梨県北富士への国内旅費として使用するほか、共同研究者としている中国の曽弁護士を招聘するため、招聘費用を支出する。曽弁護士には、東京での中国環境問題研究会における報告も依頼しており、滞在は6日間を予定している。 8月には無錫市及び貴州市の環境保護法廷での調査のため、6-7日間の海外渡航費として使用する。 論文を海外の学術誌に投稿する際には、英語ネイティブチェックを依頼するため、そのための謝金として使用する。 年度後半には国内研究会での報告も予定しており、そのための国内旅費として使用する。残りは図書・雑誌の購入費用に充てる。
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