本研究プロジェクトの2年目であり、最終年度である2012年度は研究代表者を中心に、ベトナム・フエ農林大学、及びダナン大学の研究協力者、ベトナム語、カトゥ語通訳からなる調査チームを組織し、ベトナムQuang Nam省のTay Giang地区での調査を4回におよび遂行した(2012年8月、9月、12月、2013年2月)。調査地区では2つの村の120戸すべての家庭に対してアンケート調査を実施した。またフォーカス・グループ調査、及び住民に対してsemi-structured interviewを行った。同様に村落、地区、地方のそれぞれのローカル政府の担当者にも聞取り調査を実施した。これらの調査を通じて、移住後のコミュニティの復興と移住に伴う変化に適応するために必要となるコミュニティ資本の要件を検証した。 9月の調査では京都大学の研究者と院生を同行し、居住地の現状と生活状況の調査行い、現地の状況把握と情報収集を行った。また調査チームで近隣の村落を訪問し、森林保全を目的とした生態系サービスへの支払い(PES)スキームとして制定された、ダム発電歳入の収益分配制度の新システムの実施状況や効果について、参画している住民や行政担当者に聞取り調査を行った。Song Bung4ダムの建設に伴う強制移住後の現状を調査するために、カトゥ族の遠隔移住村落を訪問すると共に、強制移住民への賠償状況、新居住地での生活状況、同プロジェクトへの住民参加状況について、プロジェクト担当者、NGO関係者から聞き取りを行った。 これらの研究調査から得られた成果は国際学会での発表を行った他、英文雑誌論文に発表を予定している。また2年間に渡る本研究の成果発表、情報発信と総括の場として、ベトナム・フエ農林大学と協賛でワークショップを開催し、研究者、NGO、ダム開発の担当者、地方行政庁の開発担当者らを含む約40名の参加を得た。
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