研究課題
「東アジア海域環境管理パートナーシップ(PEMSEA)」のもとで実施されているフィリピンの自治体における沿岸環境管理のための技術移転をより効果的にする要素を確認することを目的に、PEMSEA本部、バターン州とカビテ州の州政府と町自治体において資料収集と聞き取り調査を実施した。その結果、以下の諸点が明らかになった。第一に、PEMSEA本部は、個別自治体政府をはじめとするステークホルダーが有する沿岸環境管理技術の発掘・開発・普及への支援を行うことを方針としているが、本部技術スタッフは個々の事業についての詳細な情報を持ち合わせているわけではなく、ステークホルダー同士が相互に技能参照を行うための場を提供するにとどまる。第二に、州単位での参加が基本となっている本事業においては、事業コーディネーターとしての州政府の役割が重要であり、事業を円滑かつ継続的に運営するためには、州政府の官僚機構の技術的・行政的な能力が重要である。特に、住民の技術・技能の向上のためには、一定の技術を有する州政府官僚制が主導して、基礎自治体を指導しつつ住民への技術指導と住民が有するローカルな知の発掘を行うことが重要である。第三に、州政府による住民への技術指導をより円滑化するためには、専門的な技術と住民組織化のノウハウを持つNGOとの緊密な関係の構築が重要である。そして、NGOとの関係構築をスムーズにするためには、NGO、自治体、住民組織の間の公的・私的な人的ネットワークの存在が重要である。第四に、民間企業は地域に対する財政的支援だけでなく、技術移転においても重要な役割を果たすが、その積極的参加のためには専門的人材の存在が重要である。なぜなら、民間企業はその性格上、自らの利益に直結しないような事業への技術支援を伴う参加にはさほど積極的にはならず、財政的支援に終始する傾向にあるためである。
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Proceedings of “International Symposium on Local Government Survey in Southeast Asia: Comparison among Thailand, the Philippines and Indonesia
巻: 1 ページ: 1-12