研究概要 |
期間延長した平成25年度は、福島原発事故により帰還困難区域に指定された飯館村長泥行政区をカウンターパートとした住民の意識共有支援の社会実験を行い、地域の記憶(コミュニティ形成史)が地域継承(コミュニティ意識共有化)に果たす役割の有効性を確認することができた。 社会実験は道半ばであるが、3年間に渡る本研究成果を総括するならば、既存研究・文献のレビュー、有識者との意見交換、福島原発事故被災地における社会実験を通し、地域環境の変化が住民によって受容されるためには、当該地域環境に関わる人々の間にコミュニティ意識が共有されている必要があることがわかった点が挙げられる。また、そのための一つの誘導理論として、記憶障害に対する心理療法からヒントを得た地域の記憶(コミュニティ形成史)の共有化の有効性を確認することができつつある。 助成申請段階で想定した研究成果に対する、事後の振り返りは以下の通りである。 i地域性を住民意識の集合としてとらえようとする点:本研究のフィールドワークにおいて、その有効性が検証された。/ii現代の地域崩壊過程に対する地域環境政策に新たな視点を提供できる点:現在進行中の飯舘村長泥行政区における社会実験を通して、地域住民への臨床心理学における心療的なケアが、今後の地域環境政策の新たな視点となる可能性が示唆されつつある。/iii平成の広域合併や道州制の導入等の地域再編政策に住民意識への指標を提供できる点:平成の合併の評価が問われつつある現在、「コミュニティ意識」を地域政策における住民意識の評価指標の一つとして抽出できるものと思われる。/iv国際地域学的観点での政策理論につながりえる点:本研究成果からは、言及するところまで及ばなかった。(並行して山中がとりまとめた論文『国際地域間交流の定性的事後評価に関する研究、国際地域研究論集No.4、査読有、2013,31-54』において示唆した。)
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