研究課題/領域番号 |
23651041
|
研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
吉永 健治 東洋大学, 国際地域学部, 教授 (40392576)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | Water Democracy / 水管理組織 / 灌漑用水 / コンフリクト / 気候変動・適応策 / アンケート調査 |
研究概要 |
本研究は、アジア諸国を対象に気候変動に対する適応策としてWater Democracyの機能や役割を分析し再認識するとともに、その再構築に向けたアプローチに関する考察および政策提言を行うことを目的とする。日本をはじめ多くのアジア諸国では伝統的にコミュニティや農業用水の水組合を通じて地域の水に関わる伝統、技術、文化および環境に配慮し、対話(dialogue)により平等で効率的なルール、すなわちWater Democracy(ここでは、水問題の民主主義的な解決を意味)によって水不足や水紛争に対応してきた。しかし今日、そうしたアジア諸国の地域やコミュニティにおいてこのWater Democracyが崩壊し、その役割や機能を失いつつある。 23年度は、研究計画に沿って日本(大分県の大野土地改良区)、フィリピン(3つの水管理組合)およびタイ(2つの水管理組合)を対象に現地調査を実施した。現地調査は、各水管理組合に対して同じ質問リストを用いて実施した。質問は、(1)水管理組合の組織面に関する質問と(2)水管理の実践面に関する質問、に区分して各質問に対して10項目の細部質問を設定し、5段階評価を行った。調査の対象農民は全体で147名(日本35名、フィリピン57名、タイ55名)で、それぞれ上・中・下流域からの農民の参加を得て調査を実施した。 今後、得られたデータを精査・整理し統計分析を行う予定である。また現地調査では、政府機関など関連機関の水管理担当者から、対象地区における水管理組織の活動内容等に関して聞き取り調査も行った。さらに現地調査に加えて、Water Democracy の一つの考え方について簡単なゲーム理論を用いて分析し、同時進行中の科学研究費補助金(基盤研究(B))に関連して2011年12月にインドネシアで開催されたOECD/ADBワークショップ(水管理と食料安全保障)で発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の23年度は、研究計画に沿ってアンケート調査による現地調査を中心に行った、対象国は日本、フィリピンおよびタイにおける灌漑地区の同一灌漑水路の上・中・下流の農民を対象に水管理に関する基本的事項に関して調査を実施し、必要なデータ(データ数147名)を得ることができた点で満足している。これにより今後、調査で得られたデータをもとに分統計的分析が可能となった。 また、Water Democracyに関する考え方の一端を2011年12月にインドネシアで開催されたOECD/ADB ワークショップ(水管理と食料安全保障)で発表したところ、大学、研究者、政府関係者などからの参加者から高い関心と興味を得ることができた。 以上の結果から、初年度は予定通りの進捗と成果を上げることができたと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
24年度も当初計画に沿って、海外現地調査をインドネシア、インドを対象に実施する。調査の内容は23年度における内容と異なったものとし、とくに水管理組織が健全に機能することで、どのような効果が期待できるか、に関する調査を行う。たとえば、Water Democracyの再構築が水管理以外のコミュニティ組織の強化や活動の促進に果たす役割などに関心をもって調査する。 また、Water Democracyの再構築が気候変動の影響による水制約に対して、どのように効果的であるか、について聞き取りを行うとともに、ゲーム理論による理論的な分析を実施する。 こうした調査や分析から得られた結果については、大学の紀要や機会があれば国際的な関連する会議で公表していきたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
上記の研究推進方策で述べたように海外辺地調査を中心に活動を行うことになることから、大半を海外旅費、車両借り上げ、通訳などの調査関連費用に充当する。また、必要な関連図書の購入を行う。
|