非ヒストンタンパク質のアセチル化修飾を介したＤＮＡ損傷応答制御機構の解明

2012 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 23651050
• 研究機関: 独立行政法人放射線医学総合研究所
• 研究代表者: 安田 武嗣 独立行政法人放射線医学総合研究所, 緊急被ばく医療研究センター, 主任研究員 (60332269)
• キーワード: アセチル化 / DNA修復 / DNA損傷応答 / ヌクレオチド除去修復 / アポトーシス / 相同組換え / 放射線 / 幹細胞

研究概要

我々は、DNA損傷応答に関わる非ヒストンタンパク質の中で、試験管内でCBPおよびp300のヒストンアセチル化酵素によりアセチル化されるタンパク質を複数同定していた。同定されたタンパク質の解析により、ヌクレオチド除去修復やアポトーシス誘導におけるアセチル化修飾の重要性が明らかになった。
同定されたタンパク質の中で、ヒトRad52タンパク質は、相同組換えによるDNA二重鎖切断（DSB）修復に関わっている。ヒトRad52のアセチル化はDSBにより誘導され、このアセチル化誘導はHEK293細胞でもヒト間葉系幹細胞でも起こった。この結果から、Rad52のアセチル化は、分化した細胞と幹細胞の両方において、DNA損傷応答に重要な役割を果たすことが示唆された。また、試験管内のRad52のアセチル化はDNAやRPAの添加により阻害されたことから、DSBによるRad52のアセチル化誘導はRad52が損傷DNAに結合する前に起きることが示唆される。Rad52のアセチル化やアセチル化部位のアセチル化類似変異であるグルタミンへの置換変異により、試験管内でのRad52の生化学的活性の変化が観察された。アセチル化されるリジンの中で、核移行に関わっていない10カ所をアセチル化されないアルギニンに置換すると、野生型Rad52で観察される放射線照射後のDSB部位への集積に異常が見られた。この変異型Rad52発現細胞では、RPAは DSB部位へ集積していたが、Rad51のDSB部位への集積にも異常が見られ、放射線照射によって誘導される細胞内相同組換えが阻害されていた。以上の結果から、Rad52のアセチル化が相同組換えの制御に重要であることが示せた。
アセチル化される新規タンパク質を、さらに二つ同定し、アセチル化部位を決定した。これらのタンパク質のアセチル化の役割について解析を進めている。

研究成果

• [雑誌論文] Clinical Impact of Radiation-Resistant Mesenchymal Stem Cells in Bone Marrow Deduced from Preclinical Studies (2013)
  • 著者名/発表者名: Michikawa, Y., Hazawa, M., Saotome-Nakamura, A., Yasuda, T., Gotoh, T., Tajima, K
  • 雑誌名: Journal of Bone Marrow Researc 巻: 1
  • DOI: doi:10.4172/jbmr.1000101
  • 査読あり
• [雑誌論文] Sulfation of keratan sulfate proteoglycan reduces radiation-induced apoptosis in human Burkitt's lymphoma cell lines (2013)
  • 著者名/発表者名: Nakayama, F., Umeda, S., Ichimiya, T., Kamiyama, S., Hazawa, M., Yasuda, T., Nishihara, S., Imai, T
  • 雑誌名: FEBS Letters 巻: 587 ページ: 231-237
  • DOI: doi:10.1016/j.febslet.2012.12.002.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Structural stability of human fibroblast growth factor-1 is essential for protective effects against radiation-induced intestinal damage (2013)
  • 著者名/発表者名: Nakayama, F., Umeda, S., Yasuda, T., Asada, M., Motomura, K., Suzuki, M., Zakrzewska, M., Imamura, T., and Imai, T
  • 雑誌名: Int. J. Radiat. Biol. Phys. 巻: 85 ページ: 477-483
  • DOI: doi:10.1016/j.ijrobp.2012.04.042
  • 査読あり
• [雑誌論文] Vitronectin improves cell survival after radiation injury in human umbilical vein endothelial cells (2012)
  • 著者名/発表者名: Hazawa, M., Yasuda, T. (corresponding author), Noshiro, K., Saotome-Nakamura, A., Fukuzaki, T., Michikawa, Y., Gotoh, T., and Tajima, K.
  • 雑誌名: FEBS Open Bio 巻: 2 ページ: 334-338
  • DOI: doi:org/10.1016/j.fob.2012.10.002
  • 査読あり
• [学会発表] DNA修復におけるクロマチン構造の影響とヒストンアセチル化酵素の役割 (2013)
  • 著者名/発表者名: 安田 武嗣
  • 学会等名: 平成25年東京RBC新春放談会
  • 発表場所: 千葉
  • 年月日: 20130126-20130126
  • 招待講演
• [学会発表] DNA損傷によるヒトRad52タンパク質のアセチル化は、DNA二重鎖切断部位への集積に必要である (2012)
  • 著者名/発表者名: 安田 武嗣、齋藤 健吾、香川 亘、荻 朋男、 ら
  • 学会等名: 第３５回日本分子生物学会
  • 発表場所: 福岡
  • 年月日: 20121211-20121214
• [学会発表] ヒト間葉系幹細胞におけるヒトRad52タンパク質のDNA損傷によるアセチル化誘導 (2012)
  • 著者名/発表者名: 早乙女 愛、安田 武嗣、齋藤 健吾、香川 亘、荻 朋男、鈴木 健祐、堂前 直、日野 拓也、中沢 由華、羽澤 勝治、花岡 文雄、菅澤 薫、岡安 隆一、胡桃坂 仁志、田嶋 克史
  • 学会等名: 第３５回日本分子生物学会
  • 発表場所: 福岡
  • 年月日: 20121211-20121214
• [学会発表] Acetylation of human Rad52 protein by CBP/p300 (2012)
  • 著者名/発表者名: Takeshi Yasuda, Kengo Saito, Wataru Kagawa, Tomoo Ogi, Takehiro Suzuki, Naoshi Dohmae, Takuya Hino, Yuka Nakazawa, Ai Saotome-Nakamura, Takamitsu Kato, Matthew Genet, Masaharu Hazawa, Masanori Tomita, Fumio Hanaoka, Kaoru Sugasawa, Penny Jeggo, Ryuichi Okayasu, Katsushi Tajima, Hitoshi Kurumizaka
  • 学会等名: The 8th 3R symposium
  • 発表場所: 兵庫県
  • 年月日: 20121125-28
• [学会発表] DNA damage induced-acetylation of human Rad52 protein (2012)
  • 著者名/発表者名: Ai Saotome、Takeshi Yasuda、Kengo Saito、Wataru Kagawa、Tomoo Ogi、et al.
  • 学会等名: The 8th 3R symposium
  • 発表場所: 兵庫県
  • 年月日: 20121125-20121128
• [学会発表] 非ヒストンタンパク質のアセチル化修飾を介したDNA修復制御機構 (2012)
  • 著者名/発表者名: 安田 武嗣
  • 学会等名: 遺伝研研究集会 「遺伝情報の安定性を支える分子メカニズム」
  • 発表場所: 三島
  • 年月日: 20121003-20121004
• [学会発表] DNA損傷応答に関わる新規アセチル化標的タンパク質の同定 (2012)
  • 著者名/発表者名: 安田 武嗣、齋藤 健吾、香川 亘、荻 朋男、鈴木 健祐、堂前 直、日野 拓也、中沢 由華、早乙女 愛、羽澤 勝治、花岡 文雄、菅澤 薫、岡安 隆一、胡桃坂 仁志、田嶋 克史
  • 学会等名: 日本遺伝学会 第84回大会
  • 発表場所: 福岡
  • 年月日: 20120924-20120926
• [産業財産権] 細胞膜透過性の繊維芽細胞増殖因子の医療用途 (2012)
  • 発明者名: 中山文明、梅田禎子、安田武嗣、藤田真由美、今井高志
  • 権利者名: 同上
  • 産業財産権番号: 特願2012-259816
  • 出願年月日: 2012-11-28