研究概要 |
マイクロRNA(内在性の小分子RNA)が、幅広い生命現象を司る非常に重要な調節因子であることが明らかにされてきている。有害化学物質の引き起こす毒性現象についても、毒性現象に伴うマイクロRNA量の変動が発見されている。しかしながら、マイクロRNAがどのように有害化学物質の毒性発現の制御に関わるのかは研究が進展していなかった。その理由として、動物個体でのマイクロRNA機能解析の有用な方法が存在しないことが挙げられる。そこで本研究では、作成に多大な費用・時間が必要なマイクロRNA遺伝子欠損マウスの作出ではなく、オリゴヌクレオチドをマウスに投与することで機能を特異的に阻害または亢進できる手法を開発することを目的とした。このために、ダイオキシン曝露で減少することを我々が発見していたマイクロRNA(miR-101a,miR-122)を対象として、これらのマイクロRNA前駆体をマウスに投与することで曝露影響を抑制できるかを検証した。マイクロRNA機能に与える影響の指標としては、マイクロRNA複合体中のマイクロRNA量を、曝露による毒性影響の指標としては、肝障害マーカーである血中ALTレベルを用いた。結果としては、miR-101aとmiR122の各前駆体の投与によって、肝臓中で機能しているmiR-101aとmiR-122がそれぞれ特異的に増加し、in vivoでのマイクロRNA解析法を開発するという目的を達成できた。毒性現象に与える影響に関しては、各マイクロRNAの特異的な効果が明瞭を示すには至らず、投与するマイクロRNA等に関してさらなる検討を要する結果となった。方法が開発できたことから、マイクロRNAを介するメカニズム研究が進展することが期待できる。
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